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わからない、でもわからないことは希望でもある

本の記録
カラフル / 森絵都

以前、友人からこの本をオススメしてもらったことがあった。いつか読もうと思ったまま月日が流れ、新しく入社した会社の同僚と本の貸し借りを始めたら、この本が私の元にやってきた。
嬉しくて笑ってしまった。どんなルートを選んでも、私はこの本に辿り着くようにできていたんだなと思った。


私は大学2年の頃から希死念慮がある。それは濃くなったり薄くなったりしつつもうっすらと、今では昔からの友達のような、自分の中にいる自由気ままな猫のような感覚で共に暮らしている。
カラフルを読んで生きていく希望が生まれたかというと、そんなわかりやすいビフォーアフターはなかった。ただこの本のどこで胸がグッとなり、どこで涙がこぼれたかが、今の私を写していると思った。


人は、多面性を持っている。矛盾だらけの生き物なのに、矛盾だらけでは怖いので「この人はこういう人だ」というキャッチコピーを無意識に付けている。でもそれは「この人は"自分にとって"こういう人だ」に過ぎないし、それを忘れて勝手に決めつけて期待して「裏切られた」と感じたりする。
許せないと思ったことを、許せるかどうか。絶望の顔をした絶望は、本当にどの面から見ても絶望なのか。わからない、30半ばになれば大体のことはわかるのかと思っていたけれどますますわからない。でもそれがいい。わからないことは希望でもある。


この本を私にオススメしてくれた2人には共通点がある。「青春時代にこの本を読み、この本が好きだ」と言っていたことだ。
青春時代にこの本を読んでいたら、きっとそれは自分を作り上げる一旦になっていたと思う。でも私が読むべきタイミングは、中学でも高校でも大学時代でもなかった。今だったと思う。

そしてその2人が私の性格を知った上でこの本をすすめてくれたこと、それが私にとって今の生きる希望になった。

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