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ASKA「はじまりはいつも雨」(平成3(1991)年)

平成も残りわずかとなってまいりました。そうか、あと半年もないのですね。
巷では平成最後のなんとかかんとかが流行っておりまして、私も、先日のいんえいらいさんでのライブは「平成最後の秋の夜長」となんとなくサブタイトルにつけてみたものの、そういやあまり平成最後っぷりをフィーチャーしてなかったよなあと省みたり。
明らかに今やらねばならない楽曲づくりや家のことやこけし鉄道や本業のことやその他もろもろがたくさんあって、ホントはこんな文章書いてる場合ではないのですが(汗)、平成最後を名乗れるのは今しかないわけですし、こんなテキストを最近しっかり書いてないこともあったので、これから平成が終わる4月末まで、ぼちぼちと、自分なりに平成を振り返る企画をしてみたいと思いついた次第です(長い一文!)。
というわけで、自分が最も力を入れて聴いてきた邦楽ポップスの中から、独断と偏見で選んだ「ネクスト平成」に引き継ぎたい名曲について勝手に語っていこうと思います。

そんなわけで初めに取り上げたのがこちら。今から30年近く前の楽曲でございます。最近ASKAさんライブ復帰なさったようですね。ここで説明するまでもなく、いろいろありましたし、あえて取り上げるのも微妙なのかしら、と、思いつつ、だがしかし、作者にたとえどんな背景があろうとも良い曲であることには変わりなし、ということで気にせず1曲めです。

もともとCMソングで出て、反響が大きくてシングル化した、という背景がだった記憶ですが、私が最初にこの曲をラジオで聞いた時の印象は「なんや地味な曲やなあ」といったものでした。
が、じわじわこの曲も火がつき始めて、ラジオをつけるとイヤでも(笑)この曲が聞こえてくるようになると、「あれ、結構ええ曲やん」と、だんだん印象が変わってきました。
いい曲は、じわじわと人の心にしみていくものなのです。
同じく私が愛してやまないアーティスト、KANさんは、この曲の歌詞を大変高く評価しておられるのですが、とにかく言葉が一言一言丁寧で美しいんですよねえ。

「水のトンネルくぐるみたいで幸せになる」
「僕は上手に君を愛せてるかい愛してるかい」
「はじまりはいつも雨 星をよけて」

ひゃー、なんと想像力をくすぐるフレーズでしょう。
ちょっと物事を逆から眺めたような言い回しが、雨という、何と無くマイナスなイメージで捉えがちな情景を、見事に美しく見せているあたり、さすがですよねえ。

歌詞も間違いなくいいのですが、音楽をやる身としての私は、あえてこの曲のメロディに注目したいと思うのです。
この曲のメロデイの当時における独自性、というのは、いわゆる90年代の音楽にありがちな、定型的なAメロBメロサビ〜といった形から微妙に外れているところだと思っておりまして、所謂歌謡曲のような作りになっている点です。
「今夜君のこと〜」からのサビのメロディも1回きり。2回繰り返さずに、1フレーズのメロディでサビを歌い切ります。この辺はとても歌謡曲っぽい。当時はまだこんな曲がちょこちょこ残ってましたよね。
しかも、コード展開がまた巧みです。個人的に好きなのは、Bメロにあたるパートですね。「君を愛するたびに〜」のとこです。
わかりやすく、キーをCに変えてますが、ここのコードが

| F | E7 | Dm7 | Em | F | E7 | Am  E7 | A |

なわけですが、F→E7→Dm7の部分、F→E7で、次はAmを期待させて上昇しそうなコード展開でエネルギーを貯めつつ、まだAmに解決せずにDm7でじらして、次のフレーズでAm7に解決させたと思いきや、最後の2小節でメジャーキーに転調させて解決することで、微妙な色彩の変化が生まれているところです。ここにASKAさんの特徴あるねばっとした歌が重なることで、どこかオリエンタルで憂いすら感じる世界観が見えてくる感じ。

全体的なメロデイも、歌詞の流れや温度感に寄り添いながら展開していて、70年代くらいまでの歌謡曲ではむしろ王道な感じの展開だったかと思います。
それをうまく時代の空気とまぜあわせながら、当時の聴衆に受け入れられるような楽曲として完成されたってのが、この曲の素晴らしいところではないかと勝手に考えておる平成30年の冬です。

それでは懐かしい映像とともに、お聴きください・・・
(ほんと、懐かしいですねえ。当時中3でした、私)


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