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「就活で失敗したから、今の自分がある」と思えた話

 新卒時の就職活動にはいい思い出がない。書類と筆記はそこそこ通ったが、面接が自分にとっての鬼門で、50社以上落ちたと思う。

 面接で落とされるのは精神的なダメージが大きい。人間性を否定されたように感じるし、何が悪かったのかすら分からず、対策も立てづらいからだ。希望していたのは記者や編集職だったが、落ちまくるうちに不安が増して、他の職種にも応募するようになった。

 今思えば新卒採用以外のルートを狙うとか、編集プロダクションの見習いから始めるとか、いろいろ手はあった。だが「正社員じゃないと」「ある程度の給料もらえないと」みたいなプライドが邪魔をしていたように思う。言い方を変えれば、腹をくくれていなかった

 結局もらえた内定は、印刷会社の営業職1つだけ。親や友人は「就職難の中で頑張ったよ」と言ってくれたが、自分にとっては紛れもない失敗、挫折だった。仕方なくその会社に入ったが、仕事に身が入らない。名刺を出して「株式会社●●のKOKです」とか挨拶するたび、就職活動に失敗した事実を突きつけられている気がして、心の中で舌打ちした。

 当然成績もさっぱりで、上司から小言をもらいつつ、自分の無能さを噛みしめる毎日。だが、そんな状況になったからこそ、腹をくくれた

 「薄給だろうがバイトだろうが構わないから、新聞社か出版社にもぐりこんでやる」

 そう思い立ってからしばらくして、毎週読んでいた週刊誌でバイト募集の案内を見つけ、応募したらあっさり採用。もちろん嬉しかったが、「遠回りしてしまった」という思いもあった。実際、編集部の人からは「未経験のバイトにしちゃ、年行ってんな」という感じで迎えられたのを覚えている。

 だが、実際に編集の仕事が始まると「営業を経験しておいて良かったかもしれない」と思うようになった。

 週刊誌の仕事は過酷だ。当時は「働き方改革」なんて言葉もなく、深夜残業や休日出勤は当たり前で、家に帰れない日もザラ。そこで心が折れなかったのは、つらくなったときに「編集を辞めてまた営業やるのか?」「ここでもダメなら何やってもダメなんじゃないか?」と自分に言い聞かせられたからだった。

 一度地獄を見た奴は強い。地獄に例えてしまうのは新卒入社した会社に申し訳ないが(別に会社が悪かったわけではなく,自分がダメ社員なだけだった)、もし新卒で出版社に入っていたら、編集の仕事を続けられていたかどうか分からない。その意味では、遠回りして良かったかも……と思えるのだ。

 今年の就活戦線は、新型コロナウィルスの影響で混乱しているようで、学生たちにかかる負担も例年以上だと思う。もし希望が叶わなかったとしても、そこで諦めないでほしい。新卒採用だけが就職じゃない。

 そして、運良く希望の会社に入れた人も安心しないでほしい。数年もすれば、地獄を見て腹をくくった奴があなたの会社にやって来て、競争相手になるかもしれないのだから。

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