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知らないことは出来るようにならない。

以前からTwitterで呟いている「用語の重要性」について。


今現在学んでいるハンドボールの年代別育成方法の中には数多くの「用語」が並んでおり、各年代で身に付けなければならない技術や、コーチたちが学んでおかなければならない留意点がものすごく丁寧に整理されています。

たとえば、私たちのよく知る「バスケットボール」や「バレーボール」、「サッカー」など、日本の中でメジャーな球技には多くの用語が存在しており、そのスポーツに精通していない人からすれば「何を訳のわからんことを...」と思うかもしれませんが、各競技の人の間では共通の概念のもとで会話が成立しています。

これはいわば「共通言語」、日本で育った私たちが英語やスペイン語を理解することが難しいことと同じです。逆を言えば存在している言葉さえ理解すればその言葉を喋っている人たちの世界に一緒に住むことが出来ます。

その競技の人たちだけがわかる言葉を整理したところで、新しくそのスポーツに参入してくる人は少なくなるんじゃないの?と思う方もいらっしゃると思いますが、全くの逆です。

用語が整理されれば、そのスポーツの土台が安定します。ハンドボールというスポーツが因数分解され競技の実態が見えた方が、かえって新しくハンドボールを始めようとしている人からすれば入りやすいのです。

ハンドボールを日本の中で押し上げていくためにも用語の整理は必須で、指導現場やトップの環境、様々な環境に良い影響を与えることになるでしょう。

用語の多さ=積み上げられた歴史

昨今見られる様々な技術や戦術は歴史と共に生み出されたものです。初めからあったものではありません。その時代に流行っていたものに勝てるような、新しい技術戦術がどこかで生み出され、またそれが流行って淘汰されていく。

そうして技術や戦術が生まれていきました。

生み出されたものには名前がつけられ、歴史の中から現在に至るまで蓄積されていったものです。その中には卓越した選手が何年とかけて生み出した技術もありますが、今の私たちはそれらをインターネット上で検索し、見て、学び、およそ数日から半年程度の練習でマスターしてしまいます。

これが積み上げられた歴史の意義です。新しく0からスタートする必要は全くなくて、これまでに分かったことを引き継ぐことで、これまでプレーしていた選手より卓越した選手になる可能性を秘めています。

いわばショートカットキーのようなものですね。育成年代で習得する必要のある技術が体系化されていれば、その年代で必要な技能、技術を取りこぼすことはありません。

大学生までスピンシュートを打ったことがない選手は、その後大人になってスピンシュートを的確に打つことは難しくなるし、空中でフェイクをかけてこなかった選手は飛んだままのコースに打つことが多くなります。

一つ言いたいのは、それは決してシュートが打てない彼らの責任ではないということです。なので、今までそういった練習をしてこなかった選手が試合でシュートを外すことは必然的。指導者でさえ知らなかった技術の習得が必要なのです。選手の責任ではないと言いましたが、結局はその選手のパフォーマンスが全てなので、今からでもいいから練習しよう。となるわけです。厳しい世界です。

育成の現場で取り組むことが整理される

マンツーマンディフェンスには2種類あるってご存知ですか?

マンツーマンディフェンスとは1人のディフェンダーが1人のオフェンスを責任を持ってマークするという守り方です。U-12まではディフェンス、オフェンス共に1:1の感覚を養うために立体的なディフェンスとともに推奨されている守り方です。

1つ目はディスタンスマーキング、多少の距離を持って守る方法。
2つ目はクローズマーキング、パスをもらえないほどの距離感で守る方法。

おそらく日本で「マンツーマンディフェンス」といえば、2つ目の方ではないでしょうか。必死でついていこうとするけど瞬間的な動きに反応できず、突破されてしまうことが多いように感じます。

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前提として、ディフェンダーはボールとゴールの間に立ち続けるように意識する必要があります。しかし、初めからクローズマーキングを行うと振り切られることが多いと思います。そこで初心者にはディスタンスマーキングを教えて、距離を保ちながらボールとゴールの間に居続けるという方法があります。

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フットワークが慣れてきて、ボディコンタクトに抵抗が無くなって初めてクローズマーキングを取り入れることができるのです。

このように技術一つ取ってみても、選手の成長段階や試合のどこの場面で使われるかによってさらに細分化されています。

現在は勉強熱心で素晴らしい指導者の方に見てもらいたいという選手が特定の学校に偏って進学してしまい、大会などでも同じようなレベルで試合ができる機会が少ないことは明らかです。

しかし、その年代に必要な技術が整理されているということは、その年代の指導にとびきり大きな差がなくなるということです。

選手たちは自分の学力に合った学校へ進学し、そこで整理された指導を受けることで勝負の年代になったときに最高のパフォーマンスが出せるよう準備する事ができれば、もっとハンドボールをプレーする選手の選択肢が増えると思うんです。

「用語を整理する」ことは一貫指導には欠かせない

一貫指導は何も選手たちの能力を「平ら」にしたいわけではありません。みんな同じようなプレーをして、同じようなハンドボールをすることではありません。選手たちが成長していくそれぞれの段階で身につきやすいさまざまな要因を取りこぼさないようにするために存在します。

選手たちがオリジナリティを持った創造的なハンドボールを展開するためにも、用語を整理して、それらを共有し、環境を整備することが大事です。

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本日もお疲れ様でした!

筑波大男子ハンドボール部 森永 浩壽


2022年の今、フルタイムで働きながら日本リーグ参入を目指すハンドボールチーム"富山ドリームス"の選手として活動しています。ここでのサポートは自身の競技力の向上(主に食費です...)と、富山県内の地域との交流に使わせていただきます。