短編小説 夢語 怪談 乾杯

こんな夢を見た


その電話は

夜勤前に鳴った


親友レオの嫁さんからだった

レオが事故で病院に居る

意識なく重症との事

また連絡すると

電話は切られた


何が起きたのか分からない

駆けつけたいが

何処に搬送されたのか

分からない

それに夜勤だから

休めない


その日夜勤は

仕事にならなかった



と言うより

何やったのか

覚えてない


覚えているのは

仮眠前に

喫煙所で一服しながら

隣の大学病院を

ただ眺めていた


何が起きているのか

受け入れてない

自分が居た


大丈夫なのか


それだけが

頭を過っていた


翌日

レオは帰らぬ人になった


亡くなった事を

何時

誰に聞いたのか

今は覚えてない


ただ運ばれた病院が

仮眠前に眺めていた

病院だった事

一番近くに居て

遠くに行った事を知った





レオは

中学校からの付き合いだった


レオを含めた仲の良い

親友数名が

グループで

いつも行動していた


冗談言い合ったり

バカ騒ぎしたり

サイクリングに行ったり

カラオケをしたり

バスケをしたり




大人になっても

夜中にドライブ行ったり

年に数回

飲んでいた


大人になっても

何時でも

学生時代に戻れる

そんなであり

仲間達だった


告別式でも

出棺しても

火葬場に行っても

実感が無かった


他の親友達も

同じ気持ちだった


どうせ

ひょっこり

出てくるんだろうと

思っていた


告別式の後

近所の居酒屋で

飲むことになった


注文を終え

話題は亡くなったレオの

思い出話になった


バカ騒ぎした事

面白くないギャグを

言っていた事など

思い出しては

皆で大笑いしていた


ただレオが居ない

そんか感じだった


そんな時

「生中、誰か頼んだ?」

「いやー頼んでない」

「俺は来てるよ」

生ビールが一つ多く

運ばれてきたらしい


「店員間違ったんだろう

良いから飲んじゃおうよ(笑)」


店内は混んでいた

面倒だからお金払えば良いだろ


それぐらい愚痴らない話で

盛り上がっていた





その後は

普通の飲み会になっていた




レオが死んだ事を忘れるぐらい

普通に飲んで騒いでいた





「おーい誰か生中頼んだ?」

「また?頼んでないよー?」



また生ビールが一つ多く来たらしい



「どうしょうもない店だな(笑)」

「余程サービスいい店なんだよ(笑)」



と言い出すと

その後も

バカ騒ぎは続いた





久々に大人数集まった事もあり

かなり盛り上がっていた







「誰だよ多く生中頼んだのは?」

「頼んでないよ?また来たの?」


また生ビールが一つ多く届いた


「流石に3回目はおかしくない?」

「3回間違えるはずないよな・・・」




「なぁ・・・

レオ来てるんじゃないの」


「まさか?」


「いくら何でも

こんな時に言う話じゃないだろう」


「でもおかしいだろう3回目だよ?」


流石に皆で不思議がっていた


心霊スポットへ行ったり

怪談話が好きな仲間だから

分からなくもない


しかし実際に不思議な事が起きると

人は

怖さではなく

ただ意味が分からなくなる


そんな雰囲気が流れていた


無言の時間が

数秒流れた


すると誰が


「だったら次ビールが多く来たら

レオが居るって事にしようよ」

と言った


「あぁそうだな」

「そうするか」

皆が

一応納得した



その後

ビール件を忘れる程

また大騒ぎして

話が盛り上がった


その時

「おーいビール誰か頼んだか?」


一瞬空気が止まった


ビール 一杯だけ運ばれてきた


誰も頼んで無かった



「レオ、生中いつも飲んでいたもんな」

「あいつビールばっかりだったよな」

「あいつ居るんだよ」

「多分バカ騒ぎしているのに

忘れられているから

仲間に入れろって

怒ってんだよ(笑)」

「ありそうだよね」

「言ってそう」



レオも来ている

レオも居ると

みんな思った


「レオも来ているなら

あいつも含めて

もう一回乾杯するか」

「いいね」

「でも誰があいつの分持つんだよ」

「お前が2つ持てば良い」

「俺があいつの分も飲むの?」

「俺が飲んだら

何で飲んだんだよ!

って枕元に出てくるよ(笑)」

そんな冗談を言いながら

「では改めて

レオも一緒に」


「乾杯ー!」





その後

ビールが一つ多く来る事は

無かった


「そろそろ帰るか?」

「レオやっぱりいたんだなぁ

ビール来なかったし」

「そうだな」




突然

チューハイのコップが倒れ

ズボンが濡れた


「これじゃお漏らししたみたいで

帰れないじゃないか」

「レオがやったんだよ」

誰かが言うと

みんな腹を抱えて大爆笑した



俺達に

生きてる死んでるは

関係ない


思い出したら

何時でも逢えるんだから


何時でも

バカ騒ぎ出来る

あの頃に戻れるから















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