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終わりのない音楽なんて聴きたくない サラマーゴ『誰も死なない日』

ジョゼ・サラマーゴ『誰も死なない日』について。

ジョゼ・サラマーゴは、1922年生まれのポルトガル人として初めてノーベル文学賞をした作家です。失明する病のパンデミックを描いた『白の闇』は、covid-19の影響も話題になりました。映画化された作品も多く、『白の闇』の映画化である「ブラインドネス」では、伊勢谷友介が初めに失明した人物を演じ、日本でも話題になりました。

もし、全国民が失明したら?という仮定の下に書かれた『白い闇』のように「もし、○○だったら?」という寓話が魅力的な作家で、今回ご紹介する『だれも死なない日』も、「もしだれも死ななくなったら?」という仮定の下、世の中に起きる悲喜劇が描かれます。

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この小説は二部構成で書かれており、前半では誰も死ななくなることによって起こる問題が描かれています。葬儀屋の廃業、老人ホームの満室に加え、宗教の求心力の低下(特に復活が重要なキリスト教では、死なないのであれば復活とは?)が起こります。

後半では、その騒動を引き起こした死神と、彼女(死神は女性)が殺し損ねたチェリストのラブストーリー?が描かれます。ここで音楽家が登場するのは、音楽は人生のメタファー(音楽も人生もいつか終わる。)になり得るからなのかな思いました。人の死を扱う“死神”が登場するということは、“生”を扱う神がいる世界観の物語だと考えると、いつ始まっていつ終わる事が決められている人生は、より作曲され再現(演奏)される音楽と似ていると感じました。

もしもこの小説のアイデアである「人生に終わりがなかったら?」と同じように「音楽に終わりが無かったら?」と考えると、“終りのある音楽”を作曲する行為とは、全く異なるのでしょうねー。(想像したけれど、難しい。。。)やはり、“終わりがある”ということは、少なくとも音楽(を含め時間芸術)にとっては重要なことなのかな?と思いました。

下の曲は、2017年に作曲したピアノ、キーボード、映像のための《17の練習曲》の中の一曲〈 X. 階段を上り続けるための練習曲 "Stairs Forever"〉です。ずっと音が上がり続けるシェパードトーンからインスパイアを受けて作曲しました。終わりのない音階の階段を登り続ける曲です。



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