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いま見ないで、いつ見るの? デュ・モーリア『いま見てはいけない』

デュ・モーリアの『いま見てはいけない〈Don't look now〉』という中編小説について。

デュ・モーリアは、1907年生れのイギリスの作家で、ヒッチコック監督の撮影した『レベッカ』や『』の原作者として知られることの多い女流作家です。今回取り上げる『いま見てはいけない』も、『赤い影』という邦題で映画化されており、世界一美しいラブシーンがあることで有名なミステリー映画の傑作です。

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この物語では、娘を亡くした夫婦が傷心旅行として滞在したヴェネチアで体験する奇妙かつスピリチュアルな出来事が描かれています。様々な怪しい人物が登場し次に何が起こるか分からない状況の中で突然、裏の裏をかいた終わり方をするのですが、それが作品の大きな魅力になっています。

物語の中で、霊感を持った老姉妹(片方は盲目)が登場します。彼女たちは夫婦に対して、「亡くなった娘があなたたちのそばにいます。」や、「今すぐ、ヴェネチアを去れ!」と言い放ちます。
妻は彼女達を信用し、親密になるのですが、夫は胡散臭く感じ、あまり相手にしません。そして案の定、夫は死んでしまうのですが、「理屈では説明できない直感をバカにする男なんか死んじまえ!」というデュ・モーリアの作家としてではなく、妻(女)としての夫(男)への恨みが感じられるのは僕だけでしょうか。。。

僕の経験から言わせてもらうと、奥さん(女性)の直感は、99パーセント当たります!スピリチュアルということではなく、物事を男性とは全く違った視点から見ているのかな?と考えています。

ところで、2017年に《Four Scenes》という2台ピアノのための組曲を作曲しました。その組曲の終曲のタイトルを、
〈IV. いま止めてはいけない"Don't stop now"〉 for Weber 
と名付けています。デュ・モーリアの『いま見てはいけない〈Don't look now〉』の内容と直接関係はないのですが、この曲を書いている時にこの本を読んでおり、タイトルを少し拝借しました。

この曲は、常動曲と言って常に一定した音符の流れの急速なテンポによる楽想が特徴となっています。作曲家のウェーバー(Weber)がこのスタイルを得意としていたこともあり、この曲は彼に捧げられています。

ー音楽と人生はその終わりまで止まることを許されない。常動曲。ロンド形式ー


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