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氷河期世代ユニオンが目指すもの

私がこの活動を始めたのが2007年なので、もう16〜7年ほどになりますが、2019年から遅まきながら政府の支援策が開始され、最近ようやく当事者からも政治に対する不満の声が上がり始めるようになりました。そこで改めて氷河期世代ユニオンが目指すものはなにか?ということについて説明したいと思います。

苦労が報われる社会


まず何よりも、当事者1人1人がこれまでの苦労が報われて、残りの人生を幸福に生きられるようにすること、これは活動の軸でもあり、これまでも重要視してきたことです。

その上で、この国の雇用システムを改めて、生まれた年代に左右されず、1人1人の能力が正当に評価され、努力が報われる社会にすることも、後世に同じ問題を引き継がせないために重要なことだと考えています。

特に日本独特の雇用システムである

新卒一括採用
年功序列賃金
終身雇用

これらは早急に改める必要があります。なぜならこうした慣習は高度成長期の経済が右肩上がりで拡大していく慢性的な人手不足の時代に確立した制度であって、好況と不況を10年サイクルで繰り返す現在の日本の社会には適しておらず、卒業年の景気次第で人生が決まる卒業年ガチャの状態になるからです。

そもそも多くの人は物心ついた時から自分の将来について思いを巡らせ、様々な努力を積み重ねて就活に臨むわけですが、卒業年の景気次第でどこに就職できるかが決まるのであれば、それまでの努力はいったい何だったのか?ということになります。

これは例えるなら、クイズ番組で毎回10点ずつ点数を上げていった回答者が「最後の問題は1万点で〜す!」と司会者から言われるようなものです。しかもその最後の問題は対策の立てようがない完全な運ゲーなのです。

これでは努力をするのがバカらしくなりますし、何より不公平です。それに企業にとっても好況の時は採用基準を引き下げ、不況の時は優秀な人材を採用しそびれることになるので、長期的には組織が衰退し、国際競争からも遅れをとることになります(実際そうなってますね)。

日本型雇用システムのアップデート


では、どのような雇用システムであれば公平で、競争力も維持できるのか?という話ですが、

トライアル雇用の推進→年齢/職歴の非開示
給与体系(手当)の見直し→社会保障の充実
解雇規制の緩和→ベーシックインカムの導入

こうしたことを進めていく必要があります。1つずつ説明します。

トライアル雇用の推進

 →年齢/職歴の非開示

現在は年齢や経歴からその人の能力や社会的な地位、場合によっては人間性まで判断して採用の可否を決めることが一般的です。逆に言うと、年齢や経歴が採用基準を満たしていなければ、採用されることはありません。

ですが、こうしたことは後から努力によって変えられるものではないため、進学にしろ、就職にしろ、熾烈な競争を強いられてきた氷河期世代にとっては、前後の世代と比べて不利な評価をされがちです。

なぜなら書類選考で進学時や就職時の倍率の高さが考慮されることはなく、最初に不本意な形で就職すると、それがその人の”経歴”となり、再就職の際も、その経歴を基に評価されることになるからです。

こうした不公平を無くすには、年齢や経歴の開示は任意とし、面接ではその人の意欲や態度を評価するにとどめ、あとは実際の現場で働いてもらい、その人の適正や能力を総合的に判断して採用の可否を決めるというふうにする必要があります。

そうすれば積極的にアピールしたくない、相手に偏見や先入観を与えてしまいそうな情報は非開示にして、現場での仕事ぶりだけを評価してもらうといった選択が可能になり、どの世代にも公平な雇用の機会が確保されることになります。

また採用する側にとっても、実際の仕事ぶりを見て採用すれば良いわけですから、書類と面接のみで判断するよりも採用リスクが低く、より良い人材を獲得できる可能性が高まります。

給与体系(手当)の見直し

 →社会保障の充実

日本の大企業の多くは長期雇用を前提とした、仕事の成果とは無関係な給与体系(手当)が数多く存在しています。これは福利厚生という点で優れているように見えますが、再就職を希望する人にとっては必ずしもメリットとは言い切れません。

なぜならこうした給与体系は、企業にとって名目はどうあれ賃金の一部であり、その賃金に見合わないと判断されれば採用を見送られることもあるからです。特に年齢給がある企業は、再就職を希望する人にとって不利な材料になりがちです。

そもそもこうした給与体系は、高度成長期のまだ社会保障が未整備だった時代に、企業が独自の福利厚生をアピールて労働力を確保するために導入されたものであり、本来は政府が社会保障制度として整備すべきものです。

近年、まだ不完全とはいえ、そうした社会保障制度は整えられつつあるため、こうした給与体系を徐々に縮小させることで、企業は仕事に対する対価のみを支払うだけでよくなり、採用できる人材の幅も広がっていくことになります。

解雇規制の緩和

 →ベーシックインカムの導入

これを言うと猛反発をする人がいるので最初に言いますが、解雇規制の緩和はベーシックインカム(最低限の生活保障)とセットであるというのが大前提です。その上で企業に柔軟に雇用調整できる機会を与え、新卒時に不本意な就職をした人にも雇用の入れ替え可能性を期待できる状態にします。

そうした場合、ベーシックインカムの財源はどうするのか?という疑問は当然あると思いますが、これは別の記事で詳しく書こうと思いますが、結論だけ言うと現状でも導入は可能です。ただしこれは段階的に導入する必要があるため、ある程度の時間は必要になります。

なぜ変えられないのか?


多くの同世代が現在の雇用システムに疑問を抱きながら、なぜ変えられないのでしょうか?それには以下のような理由があります。

既得権益層によるの抵抗
労働運動で勝ち取った権利という意識
当事者の社会問題に対する意識の低さ

簡単に説明します。

既得権益層によるの抵抗


まず、現在の雇用システムによって恩恵を受けている人は当然ながら抵抗するでしょう。ただ労働者全体からみれば、そのような人は少数派です。多くの人はこの雇用システムのせいで能力が発揮できず、やる気を失っています。

労働運動で勝ち取った権利という意識


現在の給与体系は高度成長期の労働運動によって確立されてきたものです。そのため、その成果を維持したいと考える世代(主に団塊の世代)が反発するでしょう。ですがその世代も今は一線を退き、今後は徐々に人口を減らしていきますから問題はありません。

当事者の社会問題に対する意識の低さ


これが最も大きな課題で、肝心の当事者が問題に気付きながらも、その状態を積極的に変えていこうとする気概に欠けるため、運動が前に進まないのです。ただこれも、最近は徐々に機運が盛り上がりつつあるため、今後に期待したいと思います。


※長くなりましたので一度ここで区切ります。

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