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【意外】タワマンは災害に強く、世田谷は〇〇に弱い。

こんにちは。不動産仲介エージェントの兒嶋です。フォロワー1890のTwitterアカウントを運用してます(@kojimasato)。Twitterでは安全な資金計画の組み立て方、相場分析と予測、リノベーションのポイントなどを発信しているのですが、140字では伝えきらないことをnoteを通じてお話していきたいと思います。

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今回は、タワーマンションの災害リスクについて僕の見解をお伝えします。

タワーマンションと聞くと、東京湾にそびえ立つ高層マンション群を思い浮かべる人が多いと思います。タワーマンションは湾岸(海辺)とセットで連想されるため、災害に弱いというイメージを持たれがちです。

まず結論を言うと、タワーマンションは災害に弱くなんてありません。皆さんが災害に強いエリアとして認識している「東京の西側(杉並区、世田谷区など)」と比べたときに、湾岸のタワーマンションが災害に弱いとは断言できないのです。

湾岸エリアにおける津波の被害は大きくない

湾岸(海)で連想される災害は『津波』です。東日本大震災による津波被害から、海辺のエリアは全般的に津波災害と強く連想されるようになりました。

地震が起きれば、東京の湾岸エリアにも津波はやってきます。それは事実ですが、みるべきなのはその被害の程度です。

以下、内閣府と江東区からの引用です。

内閣府「(想定される津波の高さは)満潮時で最大でもT.P.2.61m」
江東区「東京湾内湾のうち江東区にかかる防潮堤の高さはT.P.+4.47m~+6.87mとなっており、想定しているあらゆる津波の高さを上回っています」
※T.P.=東京湾平均海面

東日本大震災における津波の高さは、宮城県女川漁港で14.8mを観測したほか、福島県相馬では9.3m 以上、岩手県宮古で8.5m 以上、大船渡で8.0m以上、宮城県石巻市鮎川で7.6m以上など、湾岸で想定される2.61mよりも遥かに高い津波が発生しました。

また、たとえ想定される最大級の津波が発生しても防潮堤が防ぐため、大きな被害は想定されていないようです。

出典:首都直下型地震の被害想定(内閣府) 江東区における津波の影響について(江東区) 特集東日本大震災(内閣府)

液状化現象の影響は受けづらい

湾岸で連想されるもうひとつの災害が『液状化現象』です。液状化現象とは「地震が原因で結びついていた砂の粒子がバラバラになり、粒子の間を満たしていた水と砂の粒子が分かれて水が浮き上がる現象」のことです。

液状化現象は地盤の沈下や亀裂を引き起こすため、建物が傾く原因になります。液状化現象は軟弱地盤で発生することが多く、埋め立て地である湾岸エリアでも発生する可能性は高いでしょう。

ただし、たとえ液状化現象が起きたとしても、固い地盤まで杭を到達させて建設されているマンションが傾斜することはあまり考えられません。

以下、日本自然災害学会が東日本大震災による新木場と浦安での被害を調査した結果報告からの引用です。

「液状化に伴い多くの戸建て住宅が沈下・傾斜した」
「杭基礎で支持された大規模建物では、建物自体の不同沈下・損傷はないものの、周辺地盤との間に50-60cm程度の段差が見られた」

上記のとおり、東日本大震災での液状化現象によって多くの戸建ては傾いてしまいましたが、杭で支えられている大規模建物は傾かなかったようです。

参考:東京湾ウォーターフロントにおける液状化被害(日本自然災害学会)

免震・制振構造は被害が少なかった

タワーマンションは細長い形状をしているため、形状から連想されるイメージのため地震に弱いと思われがちです。

しかし、東日本大震災において、タワーマンションで採用されることの多い『免振・制振』構造の建物は、そうでない建物と比べて被害が少なかったことが報告されています。

また、地震の揺れは周期により長周期と短周期に分けられます。タワーマンションのような縦長の建物は長周期の、戸建てのような背の低い建物は短周期の揺れによる影響を強く受けるといわれています。これまで阪神・淡路大震災を含む直下型地震では、短周期の揺れによる被害が相次いできました。

つまり、地震から受ける揺れの大小は、建物の形状と地震の周期によって異なり(タワーマンションだから揺れが大きくなるわけではない)、免振・制振を採用しているタワーマンションは採用していないマンションより地震に有利な可能性もあるということです。

出典:長周期地震動への備え~南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動の影響とは?(内閣府) 東京カンテイ プレスリリース / 東日本大震災②(東京カンテイ) 長周期パルス 超高層ビルを破壊する脅威の揺れとは?(NHK)

最も怖い災害は〇〇

首都直下型地震で本当に怖ろしいのは、津波でも液状化でも揺れでもありません。

最も怖いのは「火災」です。

首都直下型地震による死者は最大で23,000人と予想されていて、東日本大震災の死者1万5,899人をはるかに上回ります。そして死者のうち、なんと7割は火災によって亡くなります。

以下の図は首都直下型地震で想定される建物の全壊および消失被害を、マップに表示したものです。

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図:250mメッシュ別の全壊・焼失棟数(都心南部直下地震、冬夕、風速8m/s)(内閣府HPより)

ご覧の通り、山手線の外側は、ほとんどのエリアで全壊や焼失による被害を多大に受けるようです。地盤が固く地震に強いイメージのある世田谷区や杉並区といったエリアは、むしろ多くの建物が倒壊や焼失の被害を受けます。

地盤の固いエリアは古くから人が住んでいたため、燃えやすい戸建てもたくさん建っています。そのことが逆に、地震による建物の倒壊や火災の被害を大きくしてしまうのです。

一方の湾岸エリアは、むしろ建物の被害があまり想定されていません。燃えてしまう戸建てがほとんどなく、新耐震以降の建物が多いことが理由と思われます。

タイトルではキャッチを考えて「世田谷は〇〇に弱い」とつけていて、タイトルの〇〇に入るのは『火災』になります。ただ、上記の通り世田谷区だけでなく他の区も火災リスクを抱えていますし、世田谷全域が危険なのではなくエリアによって想定される危険性に差はあります。

(世田谷にお住まいの皆さま、すいません。世田谷区はすごく素敵なエリアだと思ってます。僕も住んでいました。)

出典:特集首都直下地震の被害想定と対策について(内閣府) 

東京で家を買うなら見るべき、無料の〇〇

東京都では各地域における地震に関する危険性を、建物倒壊危険度、火災危険度、災害時活動困難度で判定し、総合危険度を公表しています。

地域危険度は5つのランクに分かれていて、危険度の低いランク1および2は全体の77%、危険度の高いランク4および5は全体の6.7%、存在しています。危険度の高い地域はマップ上で暖色で表示されています。

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図:地域危険度が地域ごとに色分けされたマップ(東京都都市整備局)

以下の表は、実際の地域危険度測定調査の結果です。

無題

同じ梅丘でも1丁目は総合危険度がランク2なのに、3丁目は総合危険度がランク4になっています。Googleマップでみてみると、1丁目は梅ヶ丘駅周辺で道路の幅も広いですが、3丁目は戸建てが密集していて確かに災害時の活動が困難にみえます。

地域危険度は東京都都市整備局のHPで、誰でも無料で閲覧できます。Googleで『地域危険度測定調査』と検索すればヒットしますので、家を買うなら是非チェックしてください。

出典:地震に関する地域危険度測定調査(東京都都市整備局)

タワマンの弱点は・・・

タワーマンションが災害に弱いわけではないことを、お分かりいただけたと思います。むしろ、他と比較するとタワマンや湾岸エリアは揺れや火災に安全である可能性すらあります。ただ、そんなタワマンにも弱点があります。

タワマンの弱点は、揺れと停電による『エレベーターの停止』です。

内閣府の想定によると、「(地震当日は)エレベーター閉じ込め多発。救出に少なくとも半日以上。」「電力の9割回復までに1か月」とされています。

電力供給の回復は人口の多い都市部が優先されると思いますが(品川区の資料では「電力の全復旧に6日程度」と表示があります)、数日~数週間と長期化する恐れはありそうです。

タワーマンションには非常用電源が備えられているため病人や怪我人の運搬に甚大な支障はないと思いますが、電力回復まで日常生活にはエレベーターを使用できないと考えたほうが良いと思います。

エレベーターを使用できなければ、高層階の住人は地上に頻繁には降りられません。食料品など災害時の備えは『最低3日分』と言われていますが、高層階に住むのであれば、7日分を用意するなど徹底した備えが重要になりそうです。

出典:首都直下地震 助かるためのキーワード(NHK) 大地震発生!(品川区) 

食わず嫌いせず、タワマンも検討しよう

タワーマンションを特に勧めるわけではないですが、先入観で過度に避けずに検討してみて欲しいです。行くだけなら無料ですから、一度くらい内見してみてはいかがでしょうか。

僕のお客さまでも、「絶対にタワマンは嫌!」と言ってたのにタワマンを買った人、結構います。

兒嶋将人について

僕は仲介エージェントとして不動産の購入をお手伝いしています。詳細は以下のnoteでご覧ください。Twitterでは、ほぼ日で旬な情報を発信していますので、是非フォローしてみてください。

ご覧いただき、ありがとうございました!では、また。

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