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【いるかプロジェクト始動4】近未来コミュニティ構想(小説風)「たっくんの家」


これまでのあらすじ
ミカさんの誘いで八ヶ岳に行って以来、心のモヤモヤが取れない。そんな時再びミカさんから八ヶ岳で仕事を手伝ってくれないかっていう誘いを受ける。ちょうどヒロシ先輩からの北海道に移住するという告白を受けた。たっくんは心の中ではもう決まった。


ぼくが、ミカさんから電話をもらったのは、2025年年末。師走の忙しさで世間もソワソワしていた。今年もスーパーエルニーニョ現象とかいう冷夏であったが、冬のこの時期にしては暖かな日々が続いていた。

年は明け2026年。2020年のパンデミック、それが落ち着いたら今度は、にわか令和バブル。そして日本デフォルト。この日本もこの5年間は本当に激動期。というより2019年前が既にどんな世界だったか思い出せない。だけど人間は本当に強いもんだ。こんな変化にも対応できてしまうんだから。
正月休み明けにぼくは今勤めているのシステム会社に辞表を出した。まあ、給料もデフォルト以来生活できる程度になっていたし、守るべき立場は既になかった。

「よし!人生を変えるぞ」

ぼくは、鏡を見ながらひとり呟いていた。

出発の朝、八ヶ岳にいるミカさんに電話を入れた。

「これから八ヶ岳に向かいます。」
「いよいよね。まさかこんなに早く決めるなんて思ってなかったわ。」
「迷うって結局何かと比較して、どっちがいいかなって考えることですよね。ぼくには失うものもないし、なんだか八ヶ岳のコミュニティにひかれてしまったみたいです、ワハハハ」
「じゃー、待ってるわね」

山梨県北杜市。八ヶ岳の南麓に位置しておりいくつかの町や村が合併してできた市だ。すぐ隣の長野県茅野市は八ヶ岳西麓になるが、ここ北杜市と比べると雪が多い。冬の南麓は八ヶ岳から降りてくる冷たい風(八ヶ岳おろし)で雪は少ない一方メチャクチャ寒い。標高もコミュニティのある高根町や小淵沢は標高が1000m夏は涼しく過ごしやすい。

ぼくは高根町の元ペンションの一室をシェアハウスとして営んでいる高崎夫妻のところにお世話になることにした。家賃は月に1万円。平均給与は4万円いかないご時世なのでデフォルト前と物価の比較はできないけど、ぼくにとっては決して安くなかった。

しばらく住むことになるこのシェアハウス。個人部屋は狭いけど共用スペースがすごいの何の。暖炉もあるし、ワークスペース、それにお風呂にサウナ。あとは山崎ご夫妻の自然農の野菜が食べ放題。お水だって井戸水で本当に美味しい。これまでは名古屋のビル群に囲まれた毎日だったから全く別の国。

早速シェアハウスのみんなが歓迎会バーベキューをしてくれた。男女問わず30代。みんな独身だ。全国から集まってきている手に職のある人たちばかり。お医者さんに皮細工の職人、そして山の木を管理するプロとかね。

「ねーねー、たくみさんっていったっけ?」

ちょっと酔っ払った背の低いでも可愛らしい女の子が酔った赤い顔で話かけてきた。

「そうです‼️よ、よ、よろしくお願いします!」

「じゃー、たっくんって呼んでいい?」

「もちろん」

「ねえ、皆んな〜、今日からたっくんね〜、よろぴく!」

なんか酒癖悪そうな子だなと、けど憎めない子だ。
そうして八ヶ岳引越し1日目は終わった。

よく朝、指定されたところに出勤した。
ええ〜、ここもドームハウス。そのハウスの前には野菜も作っているようだ。

「たっくん、おはよう〜」

「あ、ミカさん!おはよう御座います」

「じゃ〜寒いから中に入って」

中は薪ストーブが付いていて既に暖かい。それでいてPCがそのドテッぴろいハイスの中央に10台ほど並んでいた。

「あの〜ミカさん、そういえばプロジェクトってどんなプロジェクトなんですか?聞くのも忘れて八ヶ岳に来ちゃいましたが。」

「キャハハ、あなた思いと言わね。それは簡単にいうとね、AIのお役所を作るプロジェクト」

「え???」

「だから〜、政府をつくる仕事」

ぼくは一瞬聞き間違ったのかと思ったけど、あまりにも現実離れしている。2023年にオープンAIがブレイクして、そこからの開発戦争は日進月歩。一気にこの分野が進化している。でも政府をつくるのはまだ聞いたことはなかった。


つづく


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