国際宇宙基地の延命と今後
米国NASAは、ISS(国際宇宙ステーション)の運用を2030年まで延長することを明らかにしました。
共同運営していた欧州ESAも同じ発表をしていましたが、主に設計や費用を担ってきたのはNASAなので、これで実質的に延命が確定したといえるでしょう。
ISSは戦後の宇宙開発を表す象徴的な存在で、ちょうど今民間委託へのシフトが進みつつあるようです。
ISSの構想は1980年代から開始され、米・欧・日、追ってロシア(当時はソ連)を中心に国際協調の象徴として位置づけられてきました。2000年に初めて米ロの宇宙飛行士がISSに滞在し、2022年1月の今に至るまで留守にしたことがありません。
ISSの歴史を調べると、こちら(Wired)の記事によれば、もともとは米国中心の「フリーダム」という計画があったようです。
ところが財政再建に迫られたクリントン政権の時代に低コスト要求が出て、より国際的協調を重視して今のISSが確立された流れです。
企業でいえば垂直統合型ビジネスから各機能を連携した水平型にシフトしたイメージでしょうか。
NASAの民間委託の動きはISSに限らず全体的な動きです。有名な事例だと、晩年事故が続いて引退を余儀なくされたスペースシャトルはすでに民間のSpaceX開発ロケットなどに置き換えられています。
今回話題になっているISSでも、すでにNASAは次世代を見据えた民間委託は進めています。
2021年11月に、NASAは米国企業のブルーオリジン(ジェフ・ベゾスが設立)、ナノラックス、ノースロップ・グラマンの3社に500億円近くを投資し、より長期間滞在に向けたモジュール開発・設計を委託して競わせるようです。
一見巨額ではありますが、投資額は詳細設計費用の4割未満におさえ、残りは民間投資となっています。
言い方を変えると、それだけ実需を伴った産業としての魅力が出来つつあるともいえるでしょう。
ISSの活用方法は、以前は重力の影響が小さいことを利用した科学研究や新素材の開発などが中心でした。今は、より企業利益に直結する「マーケティング」や「エンターテインメント」の目的も出てきています。
一番分かりやすい例は「宇宙旅行」でしょう。2021年は日本からも民間で前澤友作氏がISS滞在を経験しましたが、実績が増えるとその社会的受容性と低コスト化が進むため、今後もその動きは加速すると思います。(しばらくは富裕層しか厳しそうですが・・・)
ほかに面白いと思ってるのは、宇宙での撮影や配信です。
トム・クルーズはアクションへのこだわりで有名なので相当この件は悔しがってると思いますが、宇宙空間での映画スタジオも次世代ISSには搭載されるのではないかと思います。
いずれにしても、今後は単なるロマンだけでなく実需を伴う新産業として開拓が進んでいる分野なので楽しみにしています。
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