エルサルバドルの試みが苦難を迎える
中米の小国エルサルバドルが、昨年試みた歴史上初の取り組みによる影響が世界中で注目されています。
要は、
法定通貨にしたビットコイン価値下落で債務不履行の危機に陥っている、
という話です。
エルサルバドルは、九州の半分程度の国土に600万人強の人口を有する国です。(人口密度はアメリカ大陸本土で一位)
2021年9月に、ビットコイン法が施工され、米ドルに加えてビットコインも法定通貨となりました。(厳密にはもう1つありますが実質流通ナシ)
なぜそんな投機的な金融商品を・・・と思う方がいると思います。
大きな背景の1つは、同国の海外送金手数料が莫大であったことです。
人口の割に国内では仕事がないため、米国に出稼ぎにいく人が多く、そこから国内へ仕送りとして米ドルを送ります。
その手数料が約25%で莫大となり、それを単純にビットコインに置き換えることで年間4億USドル節約できると試算されています。
ビットコイン法施工に合わせて、電子財布(デジタルウォレット)「チーボ(Chivo):紙を食べるヤギを指す単語^^」やそのサポート体制を導入してます。
これで銀行口座を持たない(人口7割相当)人でも取引できるわけですが、下記の取材記事を見ると、浸透は相当苦労しているようです。
今回は、国際的な紛争や別の仮想通貨暴落(詳細は下記参照)の影響を受けた形になりました。デメリットが極端な形で生じてしまったわけです。
国際的な通貨安定を目指すIMF(国際通貨基金)は、同国のビットコイン導入には当初から否定的だったこともあり、デフォルト時の救済すら不透明な状況です。
ビットコインは元々、国家信用に依存する法定通貨を打ち壊したい(当事者同士で価値交換したい)想いで登場しており、国家がそれを半強制化してしまったという皮肉な構図になっています。
ただ、エルサルバドルを1つのコミュニティとしてみると野心的な試みとも言えます。
その代表例として、ユニークと思ったのは下記の大統領自身のTwitterです。
要は、火山を使ったグリーンエネルギーをビットコインのマイニング活用にも使うよう国営地熱発電会社に指示した、と書かれています。
そして、こういった取り組みも背景に、地熱エネルギーを資産とした新しい都市構想も企画されています。
すごいシンプルに言うと、従来の国家の仕組みを超えた新しい独立都市を創りたい、ということです。(国家主導なので厳密には経済特区のイメージ)
いわゆる自由主義論者からは昔から理想論としては言われていますが、今回ビットコインとエルサルバドル特有のグリーンエネルギー資源も相まって、暴落の前までは現実味を帯びていました。
ただ、これは他山の石ではありません。
ビットコイン含む暗号資産をどのように従来法定通貨とすみわけるのかは、今でも日本で議論になっている重要な論点です。
1つの記事を引用します。特に最後の日本国内への影響のくだりです。
要は、ビットコインが(エルサルバドルによって)法定通貨、つまり外国通貨になったので、相当の取引規制に従う必要がある、ということです。
悪くとらえると、暗号資産のメリット(手数料搾取軽減)が失われてより投機的な商品としてしか見られなくなる恐れがあります。
まずは今回のデフォルト騒動がどこに着地するのかですが、暗号資産は国家大小にかかわらず、より国際的な影響を与えあう存在になったのは間違いないと思います。
エルサルバドルの語源は「救世主」です。
個人的には、新しい社会実装が成功して、どんな小国でも1つの選択肢として幸せを築けることを示すメシア(救世主)になってほしいです。
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