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青い鳥をつかみつつあるイーロンマスクの事業遍歴

今、世界で一番話題の人は、「イーロン・マスク」でしょう。
青い鳥をロゴマークに持つtwitterへの買収手続きを着々と進めています。

丁度最近TEDの単独ロングインタビューで、自身の事業を縦横無尽に語っています。

本人の知名度と目立った行動だけが目立ちますが、今回は、彼が主に手掛けている事業について時系列で整理してみたいと思います。



1.Zip2(1995年創業)

高エネルギーをスタンフォードの大学院で学んでいましたが中退し、兄弟と一緒に立ち上げたオンラインコンテンツ会社。後に当時コンパック(今はHPに吸収)に売却しています。

結構意外なテーマですが、Windows95が登場したころでちょうどインターネットが個人で普及する絶妙のタイミングだったのかもしれません。

よくよく顧みると、一般向けインターネットがはやりだしたのもまだ30年未満の出来事なんですよね。
今のイーロンとの事業スケールの違いが、逆にあらためて時代のスピード感を感じさせます。
また、兄弟は今でもちょこちょこと事業家と登場するので(最近はWeb3の講演で見かけました)、結構イーロンマスクにも影響をあたえた存在なのかもしれませんね。


2.PayPal(旧 X.comを1999年創業)

オンライン決済事業。ライバル会社との合併でPayPalとなり今に至ります。

後続の、話題を振りまく事業が目立つので埋もれがちですが、これがイーロンの世界的な事業につながった記念碑的な事業かもしれません。

これで得た資金(200億円といわれます)を元に次の人類に影響を与える事業に向かうわけです。
ただ、ここで注目したいのが、いわゆる「PayPalマフィア」と呼ばれる人脈です。

丁度まとめサイトがあったので引用しておきます。

ペイパルマフィアのメンバー
【創業者】ピーター・ティール…Facebook社初の外部社投資会社「クラリウム・キャピタル」を創業
【共同創業者】マックス・レブチン…メディア共有サービス「Slide(スライド)」を創業(現在はGoogle社が買収)
【共同創業者】イーロン・マスク…電気自動車製造・販売会社「Tesla(テスラ)」を共同創業
【共同創業者】リード・ホフマン…世界最大級のビジネス特化型SNS「LinkedIn(リンクトイン)」を創業
【共同創業者】デイヴィッド・サックス…企業の社内用SNS「Yammer(ヤマー)」を創業
【共同創業者】ジェレミー・ストップルマン…世界最大規級の口コミサイト「Yelp(イェルプ)」を創業
【共同創業者】チャド・ハーリー…世界最大の動画共有サービス「YouTube(ユーチューブ)」を共同創業

出所:上記記事

いずれも世界を変えたといっても誇張でないサービスを生んだ方々です。今はイーロンとの直接の絡みは聞かないですが、たとて繋がっていなくても、刺激にはなっていると思います。


3.スペースX(2002年創業)

PayPay売却資金で立ち上げたのが、いまや知らない人のほうが珍しくなった宇宙開発事業「スペースX」です。

これはもう書きだしたら止められないのですが、改めて「火星への有人到着」を目指して邁進しています。

一番画期的なのは完全再生型ロケットを開発し、成功させたことです。
コンパクトにまとまった映像(一部CG)を引用しておきます。イーロン自身が子供のようにはしゃいでいるのが印象的です。

なにもここで触れないのも乱暴なので、過去スペースXについて書いた投稿を引用しておきます。



4.テスラ(2004年出資)

こちらも説明はいらないほど著名になった電気自動車製造・販売を中心とした事業です。
意外に思うかもしれませんが、実はイーロンはテスラ創業者としては微妙な定義です。
というのも、元々別の人が2003年に創業し、それにイーロンが出資して会長を経てCEOになった、というのが正しい経緯です。

元々の創業者とのもめ事がありましたが、今は共同創業者として和解したようです。興味がある方は下記記事を紹介しておきます。

ちなみに、スペースXが開発したロケットのペイロード(ロケット積載物)に、イーロンマスクが個人所有するテスラ ロードスターが搭載されて、無事に宇宙空間をドライブ(?)したのは有名な話です。

出所:https://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/1105/413/html/03_o.jpg.html

電気自動車を主要事業と置き、最近も冒頭記事にあるとおりギガファクトリーと呼ぶ次世代工場を設立して生産性をさらに高めようとしています。

実はそれに加えて、変わった取り組みを始めています。「人型ロボット(アンドロイド)」です。

私なりの仮説ですが、テスラは「電気自動車」の事業というよりは、スマートロボット事業であり、その主目的を移動においたものが今の電気自動車と置くほうがすっきりします。

これは、イーロンが目指す視野が「将来の人類社会」であるからだと思います。
以降の事業もそうですが、単純に富の創造を目的とした活動ではない点は、彼を理解するうえで重要なフィルターです。

この感覚は、ビルゲイツと通じるところがあるのかなと想像してます。
あれだけ富と名声を得ても、例えば核融合発電という、技術的な困難さだけでなく、評判としても賛否を生みがちなセンシティブな分野に果敢にチャレンジしています。


5.SolarCity(2006年創業)

光発電システムを住宅・産業向けに提供する事業。
これも厳密にはイーロン本人ではなく、彼の親せきが立ち上げてテスラが2016年に買収し今はその1事業になっています。

裏取りはしてませんが、買収前は債務超過だったという報道もあり、親戚が立ち上げた事業だから、という判断も大きいのでしょうね。
節々に経済合理性だけでなくイーロンマスクの別の顔が垣間見える風景です。(もちろん彼なりに勝算はあったのかもしれませんが)

元々は南アフリカから家族でカナダに移住してきたこともあり、彼の人生において血族との信頼関係は相当大事にしているのかもしれません。


6.OpenAI(2015年創業)

AIを探究する団体ですが、実はこれだけはイーロンの中で異質な位置づけで、実はNPO法人として立ち上げています。
この共同設立社に、PayPaylマフィアもおり、やはり彼らとの当時からの結束が推察されます。

記事の通り、元々AIに関してイーロンは危険性をうたっており、自身で人類にとって害のないAIを開発するために立ち上げました。

イーロンマスクは自社事業との利益相反を意識してか、会長職をひいており、あまり近年は本人自体の話題は聞きません。

ただ、逆にOpenAIが開発した「GPT-3」が今激震を震わしているといっても過言ではないほどインパクトを生んでいます。

実はイーロンが会長職を辞した翌年の2019年に、Microsoftが出資を決めてこのGPT-3を使ったサービスを検討中です。

今回の趣旨とはそれるのでこれ以上の深堀は避けますが、GPT-3は今後も影響を与える技術なので、ぜひ初めて知った方は検索してみてください。


7.ボーリングカンパニー(2016年創業)

地下に巨大なトンネルを掘って高速に移動するハイパーループ構想を目指した事業。
数年前からイーロン自身が提案していたもので、既にラスベガスの地下で自動車用トンネルをつくって使われています。

理論的には時速963kmとあり、早すぎてピンときませんが東京-大阪間(直線約400km)を30分弱で着くことになります。・・・・言葉が出ません。



8.ニューラリンク(2016年創業)

7と同年に立ち上げたニューロテック分野の事業。
当面は侵襲型(脳に直接埋め込み種類)センサーを開発して、脳疾患治療を目的にしていますが、その先にある脳を使ったコミュニケーションも視野に入れている可能性はあると思います。

立ち上げ直後はステルスモードでしたが、2020年から毎年動物実験をデモで披露しています。
2021年はサルが脳でゲームをしている様子を公開し、今でもYoutubeで公開しています。

現時点では神経科学における学術的な成果はまだ発表していません。
ただ、開発中の高精度センサーとそれを正確に生体内に埋め込むロボット手術もセットでアピールしており、そのあたりが従来の枠組みから考え直すイーロンらしいです。(Space-Xのロケットも従来(スペースシャトル)の枠組みをとらえなおして完全再生型として開発)



twitterはまだ買収が完了していないので今回のリストには含めませんが、既に自身のテスラ株を売却したことも発表しており、本気なのは間違いありません。

単なる経済的な富を得るためではないことは想像つくと思います。

冒頭のTEDインタビューでも触れてますが、イーロンは自身の家すらも保有していません。(倹約家というよりは豪邸に興味がないのだと思います)

これは彼の事業の歴史をたどってみた傾向ですが、徐々にイーロンは持続可能な人類へのビジョンを色濃く打ち出しているように感じます。

それをよく表したインタビューを見つけたので引用しておきます。

イーロンの活動で「科学」の観点で示唆に富むのは、常に常識にとらわれずに「原理から考え直そう」という姿勢です。
そしてその先にあるのは「人類社会の持続可能性」だと思います。

その知性と実行力が備わってるのがさらにすごいところです。
実際に自然科学の歴史をたどっても、過去の常識を疑うことで新しい歴史的発見は生まれてきました。(相対性理論も量子力学も)

イーロンを単なる事業家だけでくくるのは間違いで、私の中では科学者であり未来を思索する哲学者でもあります。

twitterの買収が完了すると、正直更なる批判にさらされやすくなると思いますが、私自身はイーロンマスクという天才と同じ時代をともに出来たことを素直に誇りに感じます。

タイトル画像:https://www.startmag.it/innovazione/ecco-come-spacex-accelerera-su-spacex-e-starship/

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