今週の営業と、思い出すこと
八ヶ岳の雪とそのふもとの最後の紅葉とが交じる景色に、ため息のもれる朝。
新駒書店は今週も通常営業予定です。よろしくお願いします。
水、木、金 11:30 - 16:30
土 10:00 - 16:30
まさかこのタイトルの書籍で嗚咽することになるとは思ってもみなかった…
武田徹『ずばり東京2020』筑摩書房
2度め(戦前の計画を入れると3度め)の東京五輪開催を前にした都市・東京の情景を切り取り、紐解いていくルポ。
その一編いっぺんも面白いのだが、終章で記録された、新型コロナウィルスの蔓延で一変した世界。
そして、そのコロナ禍の最中、オリンピック開幕を待たず、20年9月にきっぱりと出版された本書。
あの日々を、あとから何を加えるではなく、完璧に同時代に描き切った覚悟に、あれから3年後のいま読んでも、完全にやられた。
「いま伝えなければならないことを、いま、伝える。いま言わなければならないことを、いま、言う」
社会人2年めか3年め、週刊・月刊の仕事をこなしながら、終業後に通ったジャーナリストコース。その特任教授が、武田さんだった。
正直に振り返れば、ジャーナリストになれなかった、という自分への悔いを、子育ての時間で覆い隠してきた人生だなという思いがある。
でも、あのときの授業、数々の課題、授業後に学生のみんなや武田さん、講師の方々と何度も行った飲み会、そこで得たものは、自分のなかに確かに残っている。
福島原発事故のあと、何度、彼の
『「核」論 - 鉄腕アトムと原発事故のあいだ』
を思い出したか。
(現在は、中公ラクレ新書『私たらはこうして原発大国を選んだ』で増補版が読める)
コロナ禍の狂騒のなかで、何度、彼の
『隔離という病い』
を思い出したか。
そして佐久穂に来て、満州移民について触れ、
『偽満州国論』
を思い出さずにはいられなかった(ただし、これは書かれた内容の位相はちがう)
本屋をはじめることができたとき、真っ先に思ったのは、これで武田徹の本が並べられる、ということだった。
ほんとうはもっとうまく書きたかったけど、もっと言えば、武田さんのことは、特に上記の著作を再読してから書きたかったのだけれど、いま、書けることを。(J)
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