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【書評】ジム・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』--結局は孔子

 とにかく、キツネとハリネズミの話が良かった。キツネはどうにかしてハリネズミを捕らえようとする。そのために様々なアイデアを出して出してハリネズミを襲う。それに対して、ハリネズミの防御法はただ一つだ。鋭い棘で突くだけ。でも結局はいつもハリネズミが勝利してしまう。
 会社も同じだよ、とジム・コリンズは言う。自分の会社で1番強い部分は何か。世界一になれるのは何か。まずはそこに集中したい。あれこれ色んなことに手を出すと力が分散してしまって、なかなか勢いがつかない。けれども強みに集中すれば、いつかは多くの企業に勝つことができるだろう。
 本当に全ての企業に強みってあるの、とか、自分が思っている強みって正しいの、とか、いろんな疑問はあるけれども、なんとなくこの話には説得された。
 他にもいろんな論点が出てくる。例えば、うまくいく会社は最初に正しい人選をすることが肝心、とか、その人選の中でも社長の人選が一番大事とか。
 これに関しても難しいよね。事業を始めなければそもそも誰が正しいか分からないし、人間は常に変わっていくものだから、正しかった人も正しくなくなるだろうし。その逆もあるだろうし。
 あるいは社長についてだ。自分が目立つことばかり考えて、ロックスターのように有名人になりたい、とばかりに派手なことをする社長を選ぶと、その社長が退任した後、だいたい会社は調子がおかしくなるとコリンズは言う。そりゃそうだろう。
 でもアメリカではそういう、自分が自分が、という人は多いだろうけど、日本だと割合、他の人を立てたり、あるいはちゃんと後継者を見抜いたりするような人が上にあがっていくのではないか。
 謙虚で自分より人を大事にする指導者を選ぶのが肝心、というのはすごく新しい議論のようで、実は『論語』で孔子が言ってることと変わらない。アメリカの大学教授が最新のデータを膨大に駆使して出した結果が古典と同じ、というのは、そらそうだろうな、と思う。
 むしろこの本で面白いのは、一つ一つの事例だ。やっぱりアメリカは資本主義の中心であり、何より会社が大事な国なんだなぁ。ヒューレット・パッカードなどの会社がアメリカでは本当に尊敬されているというのがよく伝わってくる。アメリカと日本は国柄が根本的に違うんだな、と感じる。アメリカ研究の素材としてなかなかいい本なのではないか。

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