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オンライン講座でトニ・モリスン『ジャズ』を読みました

https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1271818.html

 8月2日の夜7時半から、NHKの文化センターのオンライン講座「文庫で楽味わうアメリカ文学」でトニ・モリスンの『ジャズ』を読みました。
 この講座でモリスンの作品を読むのは『青い眼が欲しい』『スーラ』に続いて三作目となります。モリスン作品を読むことにはかなり慣れてきた、と思っていた受講生も、この作品にはなかなか手こずったようです。
 それもそのはず。最後まで読んでも、誰が語り手なのかさえよくわかりません。しかも、さまざまな挿話が散りばめられており、読者は頭の中で、物事の流れを再構成しなければならないのです。
 背景は1920年代。場所はニューヨークのハーレム地区。ジャズが鳴り響くこの地域で起こった、恋愛絡みの殺人事件の顛末と、ニューヨークに出てきた黒人たちが、南部でどのように生きていたか、という話が巧みに組み合わされています。
 小説の技法としてはかなり凝った書き方ですが、扱われている歴史的背景も細かく描き込まれており、百年ほど前の黒人たちが、アメリカ合衆国でどんな風に扱われていたかがよくわかる作品になっています。
 何より印象的なのは文体です。ジャズというタイトルに似つかわしく、音楽のように言葉が流れてきます。これは日本語訳より英語の原文で読む方がよくわかりますよね。
 感動的だったのはこの言葉です。世界を変えなければ、世界に変えられる。そして人生を滅茶苦茶にされる。こうした言葉一つからも、モリスンの熱い気持ちが伝わってきます。
 次回はリチャード・ブローティガンの『芝生の復讐』を読みます。これも楽しみです。


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