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【書評】今井孝『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、お金の生み出し方』--眼の前にいるたった一人の喜びからお金は発生する

 お金をもらうには長時間働かなければならない。しかも成果はレベルが高く、なおかつ他の人のものよりも質の高いものではならない。こうした考え方こそお金を稼げない理由だ、と今井は言い切る。
 それではお金はどんな風に生み出せるのか考えてみよう。お金を払うのは誰か。自分ではなく顧客である。だから自分でこんなのありきたりだ、とか、こんなサービスでは大してお金をもらえない、と考えることには意味がない。
 そうではなく、今持っているスキルでどれだけ顧客に満足感を与えられるかが重要となってくる。それでは自分視点から顧客視点に大きく転換するにはどうしたらいいのか。
 まずは小さいビジネスから始めて、顧客の意見を聞いてみる。そうすると、自分からは見えなかった思わぬニーズや喜びに気づく。そしてだんだんとサービスを改善し、顧客のかゆいところに手が届くものへと進化させていく。
 働く側が考えるべきことはたった一つだ。どの顧客なら自分のサービスに対して大きな欲望を抱いてくれるのか。そしてまた、喜んでくれるのか。そんなふうにして、自分ができることとお客が求めていることのマッチングが進んでくると、どんどん単価を上げることができる。
 というか、かなり高額な値段付けをしても、この値段でこのサービスは安い、と自分自身で思えるようになる。なぜなら現実の成果を積み重ねることで、証拠に基づいた具体的な自信が獲得できているからだ。
 こうしたサービスのやり方は、僕が好きな坂口恭平さんなんかとも共通している。描いた絵に自分で値段をつける。それを自分で作ったサイトを通して売る。ちゃんとその絵に価値を感じている顧客に届くシステムさえ作れば、絵はしっかりと売れていく。
 たとえば顧客が大人数でなくても、世界中に居る画家の中でトップクラスの存在にならなくても、絵を描きたい人と、その絵を買いたい人のマッチングが起これば、そこにはお金が発生する。
 他人と競争すれば疲れるだけだ。自分を責めてもやる気がなくなるだけだ。そうじゃなくて、目の前にいる人を喜ばせるところ始めよう。今井孝の教えはけっこう深い。

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