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【エッセイ】骨伝導イヤホンは耳が疲れない

 毎朝職場までウォーキングをするようになって困ったことがある。30分ほどただ歩くのも退屈だから、音楽を聴いたり本の朗読を聴いたりしたいのだが、最適なイヤホンがさっぱりわからないのだ。
 ヘッドフォンは大げさだし重いし、夏はイヤーカップの中で汗をかくので出来れば避けたい。でも、インイヤーのイヤホンは外の音が聞き取りにくい。もちろん外音取り込みモードを使えばけっこう聞こえるのだが、あいにく少々耳が遠いので危険性がある。
 そのほか、耳にひっかけるようなタイプでも、音を耳の穴で聞いてしまうと、外の音とイヤホンの音が混ざって、とっさの判断が遅れるということも分かった。
 じゃあ耳で聞かないイヤホンをすればいいじゃない、となったわけである。耳で聞かないイヤホンって何言ってるの、と思うかもしれませんが、それがあるんですよね。骨伝導イヤホンである。
 これ、わりと原理は簡単で、耳たぶのちょっと前、こめかみのちょい下あたりを振動板で挟んで震わせる。すると骨の中を音が伝わって、鼓膜の後ろにある、音を感じる器官に直接届く。言ってみれば、自分の頭蓋骨がそのままスピーカーになって音を鳴らすという訳だ。
 原理を説明するとかなり気持ち悪いが、実際に使ってみるとそんなに嫌ではない。最初はこめかみあたりがビリビリするけど、じきに慣れる。
 良い点を挙げればきりがない。まずは耳で聞かないから耳が疲れない、というのが大きい。しかも耳の中に何も入れないので、蒸れて痒くなったり、下手したらただれたり、ということがありえない。
 そもそも僕はシリコンアレルギーのきらいがあるので、耳穴がすぐに痒くなってしまう。だからイヤホンを買っても、痒くなりにくいイヤーピースにいちいち取り替えたりしている。こんなことをしなくていいだけでもかなり楽だ。
 もちろん問題点もある。マスクをして、メガネをして、骨伝導イヤホンを耳にかけたら、耳の周りにどれだけいろいろひっかけているんだ、という感じになる。これは地味に面倒くさい。
 肝心の音だが、人の声だったら良く聞こえるけど、低音や高音はさっぱり出ない。だから音楽好きには確実に物足りないだろう。そして夏は普通のヘッドホンやイヤホンよりはまだマシだが、やっぱりこめかみのあたりに汗をかく。まあこれはしょうがないよね。
 というわけで、今使ってるのはShokzのイヤホンである。気付けばこれなしの暮らしが考えられなくなっている。結局のところ気に入っているのだろう。他にもこれを超えるイヤホンが出てきたら色々試してみたいのだが、なかなか見つからない。 

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