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欧州からアジアへの燃料高の飛び火はどうなる?

とうとう150円にタッチしてしまった円/ドルレート、10月発売の新型IPadである第10世代は、7月に値上げされた第9世代よりもさらに4割高となり、訪日観光客が増えても、海外旅行を躊躇する方が増えそうです。再開される見通しの旅行や短期留学においても、影響は当面避けられそうにありません・・・。

他方で、今日の話は欧州に飛びます。先日、北欧の家具チェーンに久々に行く機会がありましたが、非常に変わったな・・・と思ったのが、至るところに、サステナビリティとSDGsの訴求があったことです。これまで廃棄され注目されなかったような自然素材をフル活用、さらに、電気も水も極力使わないエコ製品で溢れ、電池も蓄電池式にして、徹底したエコのPR。その徹底ぶりに、これは凄い・・・そう思わざるを得ませんでした。

当該国はEUには非加盟もNATOへの加盟を申請・・・さらに、足元では、右派政党が躍進するなど、注視すべき動きが出ています。ウクライナ情勢は、平和とエコを掲げてきた北欧にも重くのしかかっているのでしょう。


その欧州の盟主は何と言ってもドイツであることは論を待ちません。日本同様に自動車、化学に強い製造大国でもあります。
強いドイツマルクを捨てて、周辺国の影響でドイツにとってはは割安ともいえるユーロを選択したことで、輸出振興面で一人勝ちとも言われてきたドイツですが、ウクライナ問題で一転して苦しい局面に立たされています。

最大の懸念は、周知の通りロシア産ガスの供給停止です。

https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/report/2022/pdf/report220929.pdf

ドイツは、ロシアのウクライナ侵攻前は、ガスの55%ほどをロシアからの調達に依存していました。現時点では40%を割っているようですが、ロシアにとっては、ガス供給停止こそが欧州の経済制裁に対する最も強力な対抗策であり、ガスは実質的には武器相当の重みを持っているといっても過言ではありません。

ドイツ政府は、年内は、貯蔵済みのガスで乗り切れるとしていますが、冬場に向けて価格高騰は避けられそうにありません。IMFはロシアからのガスが完全に止まると、GDPを3%押し下げるとしています。本当に非常事態です。

インフレが深刻ではあるものの自国内に豊富なエネルギーを有する米国とは異なり、ドイツのエネルギー事情は脆弱といえます。サステナビリティやSDGsは北欧相当に進んでいても、それだけで強力な製造業は維持できません。フランスのように、割り切って原発を使っているわけでもなく、エネルギーの台所事情の内情は、日本と50歩、100歩と言ってもいいでしょう。その命綱とも言えるロシアとのパイプラインで、原因不明の故障が起きるなど、不穏な動きが続いていることは周知の通りです。

ウクライナ情勢は、ウクライナ対ロシアから、実質的にNATO対ロシアの構図になっており、その取引材料にガスがなっており、その影響が最も甚大なのはドイツといえます。ここがもつれつづけるかどうかが、世界のエネルギー価格の趨勢を当面は左右しそうで、アジアへの影響も甚大です。

アジアのインフレも止まりそうにありませんが、中国、インドなどは、したたかに、ロシアからのエネルギー調達に余念がない動きをしています。日本もまた、サハリン産のLNGガスは、経済制裁の別枠としたい考えですが・・・果たしてうまくいくのか・・・失敗すればガスは1割減少します。

繰り返しになりますが、ドイツの苦境は、エネルギー価格への波及という意味で、アジア諸国が大いに注視すべき事象といえそうです。

欧州とロシアは、神経質な綱引きが当面つづき、民主国家のほうには、右派の台頭などのほころびがみられ、経済と安保を両立させることができず、企業活動や市民生活は袋小路に入り込むのか・・・

無論、ロシアは、本音ではドイツ向けのガス供給の停止は行いたくないはずですので、独露の我慢比べの様相となるのでしょう。それでも、エネルギー調達および電源の多角化は、できるだけやっておかないと、いざという時に泣きをみることを、今、欧州、特にドイツが突き付けられている事実は、アジア諸国も重く捉える必要はあるのでしょう。

次回ももう少し、欧州情勢を追ってみましょう。




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