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お金にまつわるカナダの体験式授業

電子マネーが流行っているこの頃ですが、ここでお金とその教育に対しての考え方の違いに触れてみたいと思います。
 
日本国内ではまだ現金の使用が多い様に思います。クレジットカードを持っていても、スーパー、切符やコンビニなどの少額購入では現金がまだ主流に思います。以前クレジットカードは高額なもの購入専用という意見を聞いたのを覚えています。

しかし、カナダをはじめとする北米では、いかなるものに対してもクレジットカードを使った購入が進んでおり、1ドル(約百円)から使えます。結果、現金の使用頻度が極限し、カナダではペニー(1セントコイン)は数年前に利用低下と維持コストの高騰を理由に廃止されました。よって、現金で支払う場合、2セントまでは切り捨てになり、3セントから4セントは5セントとして計算されます(北米には5セントコインがある為)。当初はインフレをもたらすとの懸念もありましたが、現金自体の利用度が少ないことで、その様な懸念は起きませんでした
 
個人的な意見としても、私は一回に数百ドルをATMで引き出しますが、その現金も数ヶ月はお財布に入ったままです。では「そもそもなぜ引き出す必要があるのか?」ということですが、殆どがチップや子供のお小遣い程度に終わっています。あとは、緊急時で現金しか使えない場合用でしょうか。
 
また、北米ではクレジットカードの優遇やATMカードがキャッシュカードと併用し購入が可能になっているのも使用率向上に繋がっているのだと思います。使い過ぎ防止の一環だと思いますが、カナダではキャッシュカードによる購入が盛んです。(注:キャッシュカードは口座にお金が入っていないと使えないシステムになっています)
 
学校での金銭教育も進んでいると思います。例えば、私の娘の中学校では(注:現カナダの小学校は1〜5年生、中学校は6〜8年目、高校が9〜12年目になります)、毎年生徒同士で開催するバザーがあり、学校全体で自分達が作った商品を生徒同士で売買するイベント(授業)が開催されます。物品も生徒たちが予算内で買い物をして作っています(クラフトからクッキーや飲料など幅広い品物が用意されます)。作成用予算も学校側で指定され、グループに別れ子供達で出展物品と値段を決めます。商品についても準備期間や時間を含めた作成工程を生徒たちが考えて準備にかかります。
 
当日は自分達の商品も分担して販売し、他のグループの展示品もそれぞれ買い出しに行く取り決めになっています。会場の雰囲気はすっかりお祭り状態で、その日は両手に購入した商品を持って帰ってきます。
 
授業面としては、後日別の授業が各学年で開かれ、準備や当日の流れから、価格(買われやすい商品価格や価格に影響する条件など)や売買する上での感想を話し合って、金銭を含めた商売や購買の基本を学びます。このイベントも中学校では毎年行われる為、最高学年の8年生(日本の中学2年生)の時には、過去の経験も踏まえ授業の内容も踏み込んだ内容になっています。
 
また、子供たちは夏に良く自分の家の前でレモネードスタンドを開いて、ジュースを道ゆく人たちに売ったりします。その場合にも家具は家の中から持ち出し、原料は親や友達と自分達のお小遣いで買い出しに行き、値段を各自決めて売ります。子供達によっては、近隣の公園やスポーツ会場(リトルリーグなど)に売店を出して、売り出す子供もいます。もちろん、これらレモネードスタンドは全て子供達だけで賄わられ、親は基本参加しません。そして、売り子も多くが小学校と年齢も以上に早くから始まっています。
 
高校生になれば(80年代半ばに遡りますが)経済のクラスがあり、その中で「予算」が渡され、1年間売買を含めた株のポートフォリオ運営を行う授業があります。毎週のように株についての授業や仕組み、そして各生徒のポートフォリオの浮き沈みの原因などについてもディスカッション形式で行なったのを覚えています。そしてマクロ的な経済の流れに授業が纏められていました。
 
大学生になると、北米の生徒の多くはアルバイトをして自分の翌年度分の学費を稼いでいます。親から学費を援助される学生もいますが、多くの場合は自ら働き自己負担で学校へ通っています。学費が足りなければ、学生自身が学生教育融資を申請し、社会人になったら融資を払って行きます。そしてこれら学生教育融資が払い終わるのも30代後半から40代になることも珍しくありません。
 
この様に、北米では現金が使われる事が今はもう稀になってきており、その代わりクレジットカードやキャッシュカードが主流になっています。同時に子供達に対しての金融教育も幼少期から始まっており、子供たちの独立を促す原動力になっています。
 
KM Pacific Investments Inc代表
枡田 耕治


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