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木造建物の投資メリット

 今回のブログでは「木造建築の不動産投資効果」についてお話ししたいと思います。建設案件によっても違いは出てくるので、今回は低層商業物件に限定してお話ししたいと思います。建築資材についても木材(CLT: 直交集成板を含めた)だけでは比較ができませんので、鉄筋コンクリート(RC: 鉄筋コンクリート、SRC:鉄骨鉄筋コンクリート)の建材を引用して説明して行きます。
 
建材の投資メリットを考えると、資材の違いからくる建設上の経済的効果もありますが、経済的と財務的(法定耐用年数)からくる寿命も大きな点になります。経済的効果は下記でお話しして行きますが、寿命についてはここで簡単に触れておくと、経済的寿命というのは、その資材の物理的な使用可能年数になります。木材というのは、腐るイメージを持っている読者もいると思いますが、木材を含め定期的な管理を行なっている事で(例えば水分への接触を防ぐなど)、耐久性は半世紀以上可能になり、十分な投資利益が得られる様になります。そして、法定耐用年数はあくまでも会計上の目安であり、実質的な「寿命」を表している訳ではありません。例えば、日本の会計基準では、CLTの法定耐用年数は22年になっていますが、鉄筋コンクリートは47年と定められています。しかし、実質的な寿命はほぼ同じです。
 
では木材の長期的投資メリットについてお話ししましょう。普通の木材は硬さという面から複数階の重量を支えるには弱く適していません。なので、一般住宅用建材として使われるのが限度で適材でしょう。しかし、この木材を直交集成板(各面の繊維を直交する様に積載し接着する)にする事で、強度は増し、複数階数の建造物に使用する事が可能になります。軽さの面でもコンクリートより軽く、断熱性でもコンクリートより優れています。よって、木材を使った方が空調費用の節約にも繋がります。耐火性においてもCLTに鉄筋コンクリート同様の耐火被覆を施す事で、鉄筋コンクリート同様の耐火性を用いる事が可能になります。同時に、建築資材や工具についてもCLTだからと言って、RCやSRC以上の建築工程や部品が必要になる事はありません。ただ、丈夫なCLTであっても、同重量で鉄筋コンクリートと比べると、相当な量が必要となり、現状のサイズでは建材自体の衰えが出てしまう為、高層ビルの建築には実用性に至っていません。
 
また、TCLは鉄筋コンクリートに比べ、まだコストが高くついてしまうのが最大のデメリットです。弊社のFrancesプロジェクトでも、その差は2倍までは行きませんが、数十パーセント高くついてしまいました。しかし、デベロッパーの視点から検証すると、TCLはオフサイトの工場でほとんどの組み立てが終了しますので、現場での組立も最低人数で賄え、建築工程期間を大幅に短縮する事が可能になります。よって、現地における他の工事工程に影響する事がなく、基礎及びエレベーターなどの昇降工事を進める事が可能になります。カナダバンクーバーのUniversity of British Columbiaにある18階建ての寄宿舎(2,233m3)もCLT部の現地組み立ては9週半で完了しました。
 
地球温暖化や二炭化炭素排出制限に対しても木造(TCL)工法は貢献しており、建築後の木材からもそのメリットは得られます。この為、カーボンタックスに対しても貢献が受けられます。また、木材の方がデザイン的にも優しく、温もりを感じるというのが一般的な評判です。木目を表に出すことで、自然の中に包まれる様な環境演出が可能になり、入居者の安らぎが得られるという大きなメリットが存在します。
 
投資という面からCLT物件を検証しても、環境への配慮が益々重視されてきている為、CRS(企業の社会的責任)を重要視している上場企業や社会貢献を企業価値の一環として重要視しているテナントにとっては、CLT物件は大きな価値をもたらします。ですから、デベロッパーとして物件売却のプロフォーマ(査定分析)を行った場合、物件のサイズや買収先候補にも左右されますが、キャップレートに反映する事が可能になり、販売価格も高めに設定する事が可能になります。
 
また、CLT物件は未だ希薄なため、物珍しさや上に挙げた社会貢献的配慮からも入居価値を向上する事が可能になります。ましてや、その物件が小規模で限定されたテナントだけが入居出来る様になれば、希少価値はさらに上昇すると思っています。
 
今後さらに建築技術が向上する事で、CLT工法は促進し進化すると思います。今後の物件購入にはこの様な社会の変化も加味する必要があると思っています。同時にデベロッパーとしては、更なる付加価値が取り入れられる様になると思っています。
 
KM Pacific Investments, Inc.代表
枡田 耕治


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