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投資事業計画書の作成5ステップ

引き続き不動産投資にトピックを絞っていきたいと思っていますが、今回は投資事業計画書について我々の考え方をシェアしたいと思います。事業提案書と言っても、各投資プロジェクトの状況によっても考える内容は異なりますが(例えば同じ市場で行う5物件目と1回目の差など)、今回は全体の流れを網羅するためにも、新規プロジェクトを新規市場で取り組む想定でお話しします。ただ取り組むプロジェクトの内容によっては、新規市場参入後すぐに取り組むにはリスクが非常に高くなるものもありますので、投資家としての「読み」は必要です。
 
新規市場参入において、検討事項は大きくまとめて下記になります:
1.  ターゲット市場の経済状況(現在と将来)
2.  不動産市場と対象セグメントの現状況とトレンド
3.  金融環境
4.  投資手法の展開想定と候補テナント業界の動向
5.  プロフォーマ作成
 
 

ターゲット市場の経済状況(現在と将来)


いかなる投資であっても、まず検討しなくてはいけないのが、ターゲット市場の経済状況です。この場合にも現状だけでなく、将来的発展と企業誘致(流入)の可能性は大きなポイントです。例えば、市場の主要経済及びGDPからインフラのレイアウト(物流の出入口か再梱包地点)などの立地条件。そして人口成長率の流れや個人消費率を含めた所得。これは各市場をマクロ観点から見た可能性や今後の流れを示しています。もう一つ大事なことは、現時点だけを見るのではなく、ここ数年間の流れを把握する事です。特にターゲット市場の主要経済が国全体のGDPに占める割合です。例えば、ターゲット市場の雇用割合や生産量は大きくても、国内のGDPでは数パーセントしかなければ、その「主要産業」から見た候補市場の必要性は低いかも知れません。よって、産業ごと違う市場に移動する可能性がある事は、長期的戦略を立てる上では貴重な情報になります。
 

不動産市場と対象セグメントの現状況とトレンド


マクロビューでの経済状況を把握した上で、対象となる不動産セグメントの状況を調査する事は必須条件です。基本的な供給量や市場のサイズ、空室率の現状とトレンドは最低限の必須情報です。その上で各市場が検討セグメントに与える効果や影響も理解する必要があります。例えば、シアトルのインダストリアルであれば、港から出入国する荷物の玄関口、アメリカの西北口(カナダへの玄関口)、陸路(鉄道とトラック)のインフラ上の主要都市から流通している物品の量、対象消費者数と地域(最終配送先なのか、配送網の一点か)などを知る事で、シアトルでなければいけない理由や伴う今後のトレンドを把握する事が可能になります。
 
また、インダストリアルであれば、各物件サイズや平均テナントサイズに利用目的、空室率、供給物件の質や築年数や利用方法などを理解する事で、賃貸価格の状況や今後のトレンドも予測できる様になります。そうする事でその市場の価値、投資先候補としてのメリット(将来性があるか)などが理解出来ます。そして現状の賃貸価格に対してもある程度、投資家としての説明ができる様になるはずです。
 

金融環境


金融環境というのは融資状況のことを指します。不動産投資では全額現金で購入する場合もありますが、投資目的として利益を最大限にする為にも、融資をつけレバレッジをかける事が一般的です。これにより、オールキャッシュより約150%利益率を上昇させる事が可能になります。
 
この融資状況は各市場の知名度やポテンシャルの上に、各不動産セグメントの展望や可能性も借り主の信用度と同様に精査されます。また、金利状況で下記に話す投資手法も変化します。融資条件は不動産投資に大きな影響を与えるので、検討物件が定まり次第、モーゲージブローカー(融資仲介)を巻き込む事がスムーズな契約に繋がります。
 

投資手法の展開想定と候補テナント業界の動向


不動産市場の動向や状況によっては各投資手法が適さないこともあります。例えば、新規物件が多く出ている市場においては、市場内の特別(特有)な地域でのプロジェクトでない限り、改築物件は新規物件に勝る事はありません。よって、投資先市場の動向や求められている物件について事前調査を行う事は非常に大事なポイントになります。

また、各市場においてのテナント動向も事前調査必須事項です。例えば、ハイテク業界からの需要が上昇する中、彼らの需要がフレックスインダストリアルに集中していて、オープンスペースコンセプトが人気であったとしても、「購入して改築終了が想定される時期までこの需要は継続するのか?」、また「その頃にはどれだけ他の類似物件での入居オプションが出てくるのか?」などの予測も立てる必要があります。それは経済や業界の動向、投資市場の流れなどを理解しなければ(ハイテク業界がどの様な資本構造になっているのかの把握など)、予測は立てられません。
 
インカムアプローチにおいても、現在アメリカ市場で起きている年7〜9%の賃貸上昇がいつ頃まで継続しそうか、継続を妨げる要因な何なのか等を事前に理解しておく必要があります。
 

プロフォーマ作成


投資事業計画書を作成する上で一番重要な作業は最後のプロフォーマを作成することです。プロフォーマ自体の作成は、エクセルなどのスプレッドシートへの数値の入力なので、さほど難しい事はありません。しかし、プロフォーマから将来的物件のキャッシュフローや価値が割り出されるので、上の各項目を理解している必要があります。
 
プロフォーマにはマクロ的入力条件もありますが、物件特有の条件や予算を考慮する必要があるので、事前に外観を確認し、近隣の状況なども確認した上で、将来的展望や可能性についても見極める必要があります。
 
通常、投資事業計画書は提案物件の内覧前に社内のInvestment Committeeなどにかけられる場合が多く、この時点でのプロフォーマは初期段階での「ベスト予想」になります。そこで方向性やプロジェクトの概要が承認された後で、内覧を行い、再度プロフォーマの詳細を詰め、最終的価値予測や投資手法を決める事になります。
 
投資事業提案書の成功は、どれだけ速やかに各関係者が連携して動き、現実的プロフォーマを作り上げられるかになります。
 
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治


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