短編　雨

自分は雨が嫌いだ。

濡れるから、傘がいるから、頭が痛くなるから、暗いから。

君は雨が好きだと言った。

大好きな傘が刺せるから、雨の音を聞けるから。

君は今日も傘を楽しそうに持ってきた。

奮発して買った傘。その傘を広げた時君は言ったね。

（可愛いでしょ？この傘。）

私はその時雨が少し好きになった。君が刺す傘が見たくて、君の傘を刺した時の笑顔が見たくて。

（うん。すごく可愛い傘やね。今日が雨で良かったな。）

そして心の中で少しボソッと。

傘をそれだけ愛せる、君が本当に可愛くて、雨の中なのに太陽のようなその笑顔が自分は大好きだ。

今日は雨だ。あの子はまだあの傘を持ってるのかな。傘を刺してる所はもう見れない。

でも自分だけ、雨なのに晴れている気分になれる、あの笑顔だけは、自分だけの宝物。