睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)と認知症リスクの関連について

睡眠薬は認知症リスクがあると言われることが増えたが、本当にそうなのか。

睡眠薬が、一過性の鎮静効果や健忘、すなわち一時的な認知機能障害を起こすことは間違いない。ただし、これを、イコールで「認知症にもなりやすいはず」と判断して、患者さんにそう説明するのは、非科学的でしかない。

メタ解析やシステマティックレビュー、比較的大規模な前向き研究にしぼって、エビデンスとして参考にしうる論文を、以下にまとめた。


認知症リスクは、少量のベンゾ使用で若干高まったが、多量のベンゾ使用とは関連せず。よって因果関係を支持する結果ではなかった。
前向きコホート研究(Gray, BMJ, 2016; PMID: 26837813)

非ベンゾ系睡眠薬と認知症との関連は認めなかった。
システマティックレビュー(Kaufmann, Curr Sleep Med Rep, 2020. PMID: 33457189)

ばらつきは非常に大きいデータであったが、ベンゾと認知症リスクの関連が示唆された。
システマティックレビュー(Ferreira,Eur Geriatr Med, 2021.PMID: 34403113)


結論として、否定はできないものの、現時点で明確に「睡眠薬を長く飲むと、認知症になる」というのは何のエビデンスもない。


むしろ、夜間の不眠や、1時間以上の昼寝することは、認知症リスクを上げることが知られているし、ヘタに不眠を放置して不健康な生活を送る方がリスクを高める側面もある。


15~30分程度の昼寝をする、睡眠への考え方を柔軟にするなど、睡眠衛生指導や認知行動療法を取り入れ、必要な場合のみ漢方含めて最小限の薬物療法を必要なら導入することが、現時点で最も適切な睡眠への介入だろう。

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