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同じ空間、違う立場【#38何があってもマイペンライ!】

昨日、甲子園で阪神対巨人戦を観戦した。スポーツ記者時代以来、5年ぶりの甲子園だった。

試合は引き締まった投手戦の末、阪神が延長10回サヨナラ勝ち。非常に面白かったのだけれど、試合内容以上に、観戦自体が新鮮な体験だった。

今回、試合観戦を誘ってくれた方が熱烈な阪神ファンで、なんと私の分まで阪神のユニホームを用意してくれていた。郷に入っては郷に従え。というわけで、阪神のユニホームを着て野球を観戦した。

外野席ではないから、それほど大きな声援を送るわけではない。ヤジも飛ばさない。それでも、阪神のユニホームを着ることは、阪神ファンになることを意味する。人生で初めてタイガースを応援した。

現在は特定の推しチームを持たず純粋な野球ファンなのだが、父の影響で私は幼少期から大学生の途中までずっと巨人ファンだった。だから、巨人ファンとして昨日の試合を観ることは簡単だ。菅野投手の投球に歓声を上げ、サヨナラ負けの瞬間に頭を抱えることもできた。

スポーツ新聞で働いていたころ、私は巨人担当記者だった。記者にとって、試合を観ることは仕事だ。一球一球、球種と球速をメモする。試合中から、今日はどの選手のどんな原稿を書こうかイメージする。本当に情けない話だが、事前にネタを仕入れられていない選手が活躍すると、憂鬱だった。原稿のネタに困る選手があまり活躍しないように念じながら試合を観ることもあった。

大学2年生のときには、東京ドームでボールボーイのアルバイトをしていた。とても楽しくてやりがいのある一方で、プレッシャーのかかる仕事でもある。ボールボーイは試合中に選手と同じグラウンドレベルにいる仕事。常に集中を保ち「ファウルがきたらこう動く」などとシミュレーションしながら、試合を観ていた。

これまで私は巨人ファン、野球記者、ボールボーイとして野球を観てきた。昨日は阪神ファンだった。同じ球場で同じ試合を観ていても、立場が違えば見え方は違う。

体験をしなければ、想像するのは難しい。巨人ファン、野球記者、ボールボーイ、そして阪神ファン。4つの立場を体験できたことは幸運だと思っている。

これは野球だけの話ではない。いろんなポジションからいろんな景色を見ることが、人間に深みをもたらす。自分とは違う誰かに対して、想像力をもてる人間でありたいと思う。そのためには、たくさんの立場を体験することがきっと必要だ。


※この記事は2024年4月19日にTwitterにて公開したものです。

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