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【シナリオ】保留音でセッションする奴ら【スケッチ#2】

人 物

佐藤翔太(24)ボーカル
鈴木拓也(24)ギター
高橋健太(24)ドラム
二階堂一二三(24)ベース

○スタジオ

鈴木、高橋、二階堂が各々の楽器の準備をしている。
ひどい寝癖の佐藤がスタジオに駆け込んでくる。

鈴木「佐藤! 「迷子のお婆さんを助けた」はもう通用しないぞ!」
高橋「どうした、また電車が遅延したのか」
佐藤「お婆さんが遅延してたから迷子の電車を助けたんだよ」
鈴木「ふざけるな!」
高橋「ついに開き直ったか」
鈴木「二階堂、どう思う? こいつ!」

二階堂はスラップベースを激しく演奏する。

鈴木「ほら、怒ってるぞ!」
佐藤「楽譜無くしちゃってさ。多分昨日のファミレスに置いてきちゃったんだわ」
鈴木「何してんだよ!」
高橋「早く電話しなよ」
佐藤「ああ、もちろん」

佐藤はスマホに素早く番号を入力し、電話をかける。

佐藤「……もしもし、お世話になっております。以前そちらのお店を利用させていただいた佐藤と申します」
鈴木「言葉遣いも声質も変わったぞ」
高橋「さすがボーカルだ」
佐藤「昨日、楽譜を店内に置き忘れてしまったので、確認していただけないでしょうか。お忙しい中大変申し訳ありません」

高橋が何かを思いついたような顔をする。鈴木と二階堂に目配せして、

高橋「(小声)おい、お前ら……」

椅子に座り、ドラムを叩く準備をする。それに倣って鈴木と二階堂も楽器を構える。
高橋はバチで合図する。

佐藤「はい、お待ちしております」

佐藤のスマホから保留音「愛の挨拶」のメロディーが流れる。
そのメロディーに合わせて鈴木と高橋と二階堂がセッションを始める。

佐藤「……え、お前ら何やってんの! なんか後ろから聞こえるなと思ったら。……いや、止めろよ! お店の人に聞かれたら、その人、なんか不思議な気分になるでしょ、おい!」

メロディーが止む。同時にセッションも止まる。

佐藤「はい、いえいえ。あ、よかったです。……あ、そうなんですよ。RADWIMPSのカバーで……。あ、お好きなんですね! 是非よかったら今度ききにいらしてください」

高橋と鈴木と二階堂はRADWIMPSの曲を演奏し始める。

佐藤「おい! 失礼します!」

佐藤は急いで電話を切る。

〈了〉

*     *     *

 咄嗟の思いつきです。二階堂好き。

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