【シナリオ】食べたいけどもらわない【スケッチ#1】

登場人物

田中太郎（１７）サッカー部
佐藤花子（１７）田中のクラスメート
山田二郎（１７）田中の友達
監督

本文

○グラウンド・全景
さまざまな部活が入り混じって練習中。

○グラウンド
サッカー部が練習中。短距離走り込み。
田中太郎（１７）が我武者羅に走っている。

監督「ほら、もっともっともっともっと」

田中は速度を上げる。

○グラウンド
背の高いキャプテンがドリブルしている。
田中がディフェンスするが、あっさり抜かれる。
周囲がキャプテンに向けて歓声を上げる。

田中「くそっ」

すぐに切り返して走り出す。

○グラウンド（夕）
午後六時を知らせる夕焼けチャイムが鳴っている。
田中は蛇口を捻り、思い切り顔を洗う。

花子「お疲れ」

田中が顔を上げると、蛇口のついた台の上に佐藤花子（１７）がしゃがんでいる。

田中「なんだお前か」
花子「見てたよー、八木先輩ってホントに凄いんだね」

田中は少しムッとする。

花子「太郎もあんな感じで横にシュッて動けないの？」
田中「素人が口出すなよ」
花子「あれ、今日はご機嫌ななめ？　チョコあげようか」

花子はポッキーをカバンから取り出して差し出す。
田中は二秒ほどポッキーを見つめてから、手で押し返して、

田中「いらない。虫歯になる」
花子「え、好きじゃなかったっけ？」

田中はその場を去る。
花子はその背中を目で追う。ポッキーを齧る。

○道路（夕）
田中と山田次郎（１７）が並んで歩いている。
ちょうどコンビニから出てきたところ。
田中はレジ袋からポッキーを取り出して食べ始める。
山田はアイスバーを舐めている。

山田「いいのか？　佐藤さん一時間くらい待ってたんだぞ」
田中「今はレギュラー争いに集中したいんだよ」

田中は山田の額にポッキーを突きつける。

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　花子のポッキーを断っておきながら、次のシーンでポッキーを食べる様子を描写することで、田中のちょっとした葛藤と素直になれない姿を表現しました。