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詩 『糸/音』

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音にすると 少し離れる。 たけど繋がっている。
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2021年6月の記事一覧

詩「百日紅の夢」

詩「百日紅の夢」

             こい瀬 伊音

すてきな
すてきな時間が文字となって
だいすきなひとたちのあいだを流れてゆきます
これは
夢ですか

百日紅が
わたしをご覧なさい
と云いました

ふさ

フリルの間を風が通ります
この音がしあわせでなくて
なんでしょう

ふさ

ずっとずっと眠っていたいのです
そうわがままをいってみたのに

ふさ

もうずっと
目覚め
目覚めていたのでした

………

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詩「匙」

詩「匙」



匙 

こい瀬 伊音

求肥をひろげてあなたを
抱きしめてしまいましょう
息はもうできない
苦しいでしょう

かんたんなこと、だ
かんたんな、ことではない

とけだしていくのを
とめられるのならば
保ちたいのです
留めたいのです
 
かんたんなこと、だ

あなたが窒息するまで
ぴったりと覆って
かたちをかえることなく
ただ包んで

 遮断 
 内包  
溶解
 落雷

ひとつには
落涙

……

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詩「変身」

詩「変身」



「変身」

雨音に囲まれれば
アマガエルになる
満たされているうちに
トンネルを潜る

身体ごと君へ跳ねれば
冷えたゼリーになる
閉ざされているうちに
もっと奥へ滑る

願わくば強い酸で跡形もなく
吸収されてしまいたいのです

目覚めればまた
紫陽花の葉の上

………
2021.06.05
LIP SERVICEさんの #LIPの動画を完成させようPART2
企画にて

詩「波間の羽根」

詩「波間の羽根」

島アンソロジー
#貝楼諸島より

            こい瀬 伊音

カワセミの美しい青に嫉妬して
孔雀の羽根を胸にさした
飾りたてた意図を
汲んで

わたしには声がない
あなたにも

朝が早くに来てしまう
波が遠くひいてしまう
島影にて
風で髪を洗って待つ

こぎだしたボートは揺れ
オールはまるで言うことをきかない
すぐそばだと思えた場所が
ほんとうは遠いことをきちんとわかるには
不安と

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