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臨床ファシア学 細胞本体とそれ以外 

 「臨床ファッシア瘀血学」のカテゴリーでの考察も進み、瘀血との関連性が明確になったことと、近年「ファッシア」表記から「ファシア」表記への移行を鑑みて、新たなカテゴリーとして「臨床ファシア学」として開始します。

 最近、ファシアのもつ代替医療性を強く感じる気づきがありました。従来より「図と地の反転」としてのファシアへの関心の移行はここでも述べてきた通りですが、より明確に、図としての「細胞」、地としての「ファシア」という分類を意識しています。

 これは医療という体系を分類するにあたっても重要で、従来のいわゆる現代西洋医学的なもの(生理学とか薬理学とか)はその理論的な基盤を細胞生物学においています。つまり細胞のどこに効いているか、どこを阻害しているか、等々。抗生物質であれば、細菌の細胞壁の破壊であったり、エネルギー代謝の促進であったり、核内における遺伝子への直接作用であったり、という具合です。
 これに対して、ファシアの観点は、細胞のいわば「外殻」、もしくはそれを梱包する充填剤としての「マトリックス」となります。それゆえに正統とされる現代医療においては、注目されてこなかったものでもあります。あくまでも本体ではなく、充填剤ですから当然です。

 しかし、ファシアに注目することでその関係性が逆転します。見えてくる医学の方法論や、基礎的な考え方すべてが、これによって「反転」します。まずは脂質二重膜によって水の塊がくるまれているという従来の細胞モデルに変更が加えられます。細胞質内に縦横無尽に生体マトリックスが張り巡らされているモデルとなります。それがインテグリンを介して、細胞外マトリックスと連絡し、いわばマクロの「ファシア」となります。

 このファシアには、このブログでも紹介した「Bファシア」と「Eファシア」の二側面を捉えることができ、張力のかかった状態では「経絡」やボディマッサージではBファシア、エネルギー医学や振動医学的にはEファシア、と使い分けることができます。
 いずれにせよともに「代替医療性」のつよい概念となります。視点が、細胞本体とそれ以外、ということであれば、こうした代替医療における正統医療との相違も当然ということになります。

 またハーブや漢方といった生薬の分野が、これらの中間にあたることも、このモデルで理解しやすくなります。いわゆるサイエンス漢方的な現代医療的な漢方解釈は、アクアポリンによる五苓散の解釈に代表されるように、細胞生物学をベースに分かりやすくなる一方、おそらくファシアの硬度などに由来するであろう「腹診」や「脈診」的な視点は、細胞外であるファシアベースとなります。
 つまり、両側面を有する体系ということになり、それゆえに生薬の分野の複雑性をしめすベースにもなります。

 この細胞と細胞外という二つの視点を意識することの最大のメリットは、大方の代替医療の方法論をひとつの「身体」の中に位置づけることが可能になるということです。とくにEファシアの導入により、ホメオパシーをはじめとしたエネルギー医学、波動系の器機の合理的解釈が可能になるメリットは大きいでしょう。
 身体という一つの地図のなかに、同時に位置付けられる意義は大きく、実臨床において応用性を高めることができます。様々な体系は、折衷的に存在するだけではいわゆる「とっちらかった」状態になってしまいます。それを幾分か整理して使いやすいように区分けすることが、こうした統合医療の諸概念を考える意味となります。

 細胞本体とそれ以外、という視点は、今後のファシア理解において、極めて明快な視点を提供するとともに重要な二極の概念となっていくと考えています。

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