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アトピー診療 ビオチンについて

 アトピー性皮膚炎の患者さんの来院が最近増えているのですが、連日の暑さとも大いに関係ありそうです。その際にいろいろと生活上の注意点などお話するのですが、今回はその中でも頻出の「ビオチン」について、これまでまとめたものを少し再掲しておきましょう。

 ビオチンは、水溶性ビタミンに分類され、ビタミンB7、ビタミンH、コエンザイムR等、様々に呼称されています。そしてその効果としては、医薬品の適応として、急性・慢性湿疹、接触皮膚炎、脂漏性湿疹、尋常性ざ瘡など皮膚疾患に幅広く用いられています。

 ビオチンは主に空腸において吸収され、大量に摂取したとしても速やかに排泄されるため、副作用や過剰摂取はないとされ、毒性の少ないビタミンと考えられています。

 鶏肉のレバーに多く含まれ、その他、落花生、卵黄、豚肉のレバーにも含まれます。しかし、生卵の大量摂取により、アビジンという糖タンパク質が消化管内部において特異的に結合し、ビオチンの吸収阻害をしてしまいます。これにより欠乏症状が発現するといわれますが、加熱により、アビジンの結合能は低下するため実際には欠乏は生じにくくなります。

 ビオチンの不足を示す症状としては、うろこ状の皮膚炎、脱毛、萎縮性舌炎、食欲不振などの症状が出現するとされ、アレルギー患者においては、ビオチンを増加させる働きを持つビフィズス菌とともにビオチンを補う必要があるとされます。

 経験的には、原因のはっきりとしない頭皮における脱毛は、このビオチン補充が大きな可能性を有するように思います(当院での発毛治療にはほぼ使用しています)。またアトピー性皮膚炎やアレルギー性の皮膚炎などにおいても、ビフィズス菌と合わせて投与することで、臨床的な改善を認めることも少なくありません。(一般にビオチン欠乏は稀とされますが実際にはそうでもないように感じています)

 つまり、こうした皮膚炎の方には、食事指導や皮膚へのセルフケアに加えて、腸内細菌とビオチンに気を配った治療も不可欠となるわけです。またその基盤としてビタミンB複合体や、各種プロバイオティクスやバイオジェニックなどとの組み合わせも忘れてはなりません。便通の状態や、皮膚症状などを参考に、専門の知識を持った医療従事者と相談して方針を決めたいところです。

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名医が教える つらい時の不調ケア
星雲社 2018-08-23


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