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お気に入りのレファレンス資料

前の記事で『Magazine Date』の発行が終了したことについて触れた。終了が残念だったこと、こういう資料はなるべく紙で出して図書館で保存していきたいという感じのことだ。
 
だが実際、一読者、一図書館員として、どれだけ出版社に貢献(?)できていたのかとも考える。「出版されて当然」とは思っていないが、日々出版されていることについて無関心あるいは感謝が足りないのではなかったのか。
 
もっともっと「その本いいよ!」「いい本出たー」「来年も期待してる―」というリアクションを出していく方がわかりやすくていいのではないかと最近の状況から考えた。業界問わず出版に関して盛り上がってほしいし、盛り上げることに少しでも貢献できればと思う。
 
ただ、個人的な考えだが、あくまでも図書館の本は必要とする人に必要な本が届くようにというものであって、図書館員が薦める本がなにか権威のようなものを帯びてくることがないようにしたい。
 
なので、ここでは「ぜひ読んでください!」というよりは、「はぁ~最高~!好きぃ~!!」という個人的な気持ちで紹介する。
 
 
『出版指標年報』全国出版協会・出版科学研究所(年1回発行)
 
 はい、出た。優勝。
 
出版関係についてかなり幅広く情報収集され、整理されて書かれている。出版業界の一年の流れにはじまり、出版社や書店はもちろん、取次や業界団体、法制、各社決算、読書調査のことも書かれている。図書館のこともちょっと書いていてくれてうれしい。解説が端的で読みやすく、データも豊富だし、こんな統計がっ!?という発見も・・・
 
あ!印刷証明付発行部数だ!!!これは『Magazine Date』の代替資料として使えるぞ!日本雑誌協会のHPに掲載されている内容と同じで、『Magazine Date』のような付加情報はないけれど、統計としての役割は果たしている。やったね。
 
とにかく色々な情報がてんこ盛りすぎて、「こういう本ですよ」と紹介するのが難しい。
 
こう書いていても、「年報ってお堅い報告書みたいな感じでつまらないんじゃないの?」と思うかもしれないし、実際読んでもそう思うかもしれないけど、これが好きな人も相当な数いると思う。
 
私は、読んでいて単純におもしろいと感じる本だ。通読するような感じではないけど、パラパラと気になる項を読んで、またパラパラとめくって、を延々と繰り返したくなる。
 
では『出版指標年報2021』より、おもしろい部分を紹介する。
 
P144~「タレント写真集30年間の変遷」(芸能人の名前は敬称略で書かせていただく)
 
今回2021を見ていて一番驚いた記事だ。1993年、2003年に続き17年ぶりのタレント写真集の売れ行き動向調査とのこと。この記事にはタレント写真集歴代ベストセラーランキングが掲載されている。
 
累計発行部数1位は宮沢りえの『Santa Fe』だった。165万部とのことだが、続く2位が62万部なので、やはりすごい。
 
が、これは予想通りの1位だろう。衝撃だったのは次だ。
 
2位が、『私服だらけの中居正広増刊号~輝いて~』だったのだ。
 
まさか!いや、うちの実家にも1冊あったけど!
 
そうか、これも写真集か・・・たしかに。
 
私の記憶が確かなら、この写真集はテレビ番組「笑っていいとも!」で放送した“毎週収録に来た際の私服姿を紹介する”という企画をまとめた本だったはずだ。すごくない?そもそもの企画もすごくない?毎週私服撮影されるって私だったらめちゃくちゃシンドイ&メンドイ。すごいな。すごいしか言葉が出てこない。すごすぎて語彙なくなる。
 
ちなみに続巻のPart2は19位、Part3は48位だ。(上位50冊まで掲載されている)
 
大ヒットシリーズじゃん!
 
ちなみに本体価格352円。Part2、3は286円なんだけど、これもどうやったの??全ページカラーじゃなかったっけ?こんな安くできるもんだっけ? 考えれば考えるほど混乱する。
 
そして3位は田中みな実の『Sincerely yours…』だった。2019年発行当時、ものすごく売れているというニュースを見た記憶があるがこんなにだったのか。解説には1ケ月半で60万部突破の快挙とある。すごい人気だ。
 
あとこれ興味深いのは、ランキング上位7冊の内、ヌードじゃない写真集はこの田中みな実のと中居正広のだけなのよ。
 
30年間の年表も面白くてついつい見てしまう。この記事、誰かもっと注目してほしい。
 
 
次に目に留まったのは
 
P163「書籍新刊平均項数・平均重量」だ。
 
ん???と思うが、タイトルの通りだ。書籍の平均ページ数と平均重量の統計だ。これによると2020年の単行本の平均ページ数は224ページらしい。文庫本の平均ページ数は324ページだ。単行本、文庫本共に2019年も2018年も同じ数字だ。定番のページ数なのか??
 
事典・辞典のページ数は年によって結構違う。2020年は700ページだが、2018年は1034ページだし、2015年は492ページだ。平均重量も同様に年毎の平均重量が掲載されている。これを見ると単行本より絵本の方が重いらしい。あくまで平均の話だけど。
 
むむむ、
 

事典・辞典平均項数
2015年:492ページ
2018年:1034ページ
2020年:700ページ

事典・辞典平均重量
2015年:746g
2018年:1158g
2020年:753g

2015年、ページ数の割に重くない?
 
他にも、単行本と専門書は20ページしか違わないが、重さが倍以上違ったりするらしい。
 
見てるだけで楽しい~~
 
ただただ、楽しい~
 
他の統計も判型別(大きさ別)の新刊点数とか1ページあたりの金額とか、
 
そんなにデータまとめててえらい~~
 
さらに気になったのが
P331~「雑誌定価水準の推移」だ。
 
これは1970年から出版が続いている雑誌の2020年までの価格推移をまとめたものだ。
これがすごい。
 
たとえば私も小学生の時に購読していた少女マンガ雑誌『りぼん』は1970年は210円だが、私が購読していた1995年は400円だ。確かに400円だった記憶がある。だが、2020年では600円になっており、1970年と比べると285.7%の値上がりだ。『小学一年生』も私が小学一年生の時代は420円だが、2020年は1000円だ。
 
1970年と2020年で10倍以上値上がりしている雑誌もあるが、掲載されている73誌の平均では505.7%の値上がりとなっている。いろいろな事情があっての金額だと思うが、買う立場からするとなかなか厳しい上がりっぷりだ。子どもが小学一年生になった時に毎月1000円、年間12000円、税込みだと13200円を雑誌に払えるかというとなんとなく抵抗がある。ちなみに我が家では毎月1冊子どもに好きな本を買ってあげている。なので、現状で年間15000円くらいを子どもの書籍代として考えているから、それで『小学一年生』を購入したいと言われればそうするが・・・。同じ金額でも図書に払うか雑誌に払うかで気の持ちようが違うのだ。
 
賃金も同じくらいアップしていれば、悩むことなんてないんだけどねぇ。
 
 
しかし、これだけのデータをまとめて毎年発表しているなんて、本当に頭が下がる。国立国会図書館サーチで見ると、1958から出版しているらしいが当初はどのような内容だったのか気になる。全部まとめて通読したい。
 
なんなら、全データをテーマ毎にまとめたい。
 
最後に2021掲載のデータを基に2020年発行書籍の“THE平均”の本を探してみよう。
 
単行本【224ページ、374グラム、1444円】の本を探す
 
と、思ったが、重さってどうすればいいんだ?書誌(その本のデータ。書名、出版社、出版年、項数、ISBN
とか)には重さの記述はないぞ。あれ?この統計ではどうやって重さを算出しているんだ?現物完成後に量ってるの?全タイトル?各出版社で?そんなことできる?出荷重量とか?え??んん??
 
こんなところで、この本のすごさに打ちのめされた。
 
どうしよう。
 
とりあえず『BOOK PAGE本の年鑑』を見よう。
 
この『BOOK PAGE本の年鑑』は日外アソシエーツが毎年発行しているもので、該当年に発行された書籍のデータがジャンル別に記載されている。もちろんその年この世に誕生した全ての書籍が掲載されるわけではないが、かなりの数を押さえているので、目録としてめちゃめちゃ使える本なのだ。
 
もちろんページ数も金額も記載されている。
 
だが、重量は記載されていない。『出版指標年報』の平均重量って本当になんなの???
 
『出版指標年報』によると、2020年の書籍新刊発行点数は68608点であり、『BOOK PAGE本の年鑑2021』(2020年の情報は2021に掲載されるので)の収録点数は48500冊とあった。
 
その中から平均に近いものを探す。
 
価格は本体価格(税抜)なので、1444円という本はなさそうだった。
1440円か1450円か・・・より近いのは1440円か。
 
パラパラと眺めていくと『英国ロックダウン100日日記』という本があった。

こちらがその本の書誌情報だ。

『英国ロックダウン100日日記』
著者 入江敦彦
出版社 本の雑誌社
出版年 2020.10
判型 B6
ページ数 223p
価格 1450円
 

どうだ!223ページで1450円!!
 
224ページで1440円の本があれば、そっちがより近いけど・・・見つけられなかった。
 
 
 
はぁ~あ、すごい本だ
 
 
 
これからも本が存在することに感謝していきたい。

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