これからのリーダーシップ
企業のマネジメントには、マーケティング、会計と財務、人材・組織、戦略論などの経営の知識とその適用能力が必須である。そのため、ビジネス・スクールにおける教育の最大の狙いは、優秀なゼネラル・マネージャーを育成することだと言われてきた。しかし、これらを統合し現実のビジネスに生かしてゆくための最大のカギはリーダーシップである。
リーダーとは、明確なビジョンを持ち、部下を奮い立たせ、引っ張っていくことのできる存在である。優秀なマネージャーが優秀なリーダーになれるはずだというのが、今までの伝統的な日本企業の前提だったが、将来を見通しにくい昨今、それが崩れつつある。優秀なマネージャーが優秀なリーダーになれるとはかぎらない。マネジメントの役割は、複雑な状況にうまく対処することだが、これに対してリーダーシップの役割は、変化に対処することである。マネージャーは正しく事を為し、リーダーは正しいことを為すのである。
ジョン・P・コッター(ハーバードビジネススクール名誉教授)は、「リーダーシップでは、ビジョンを達成するために、動機づけ、鼓舞する人間の欲求や価値観、感性など、根源的だがあまり表面に浮かび上がってこない要素に訴えかけることで、変革を阻む大きな障害があろうと、皆を正しい方向へ導き続ける」と言っている。
デール・カーネギーは、著書「人を動かす」の中で、動機づけや訴えかけることの重要性を「人を変える九原則」として以下を挙げている
遠まわしに注意する
まず自分のあやまちを話した後、注意をする
命令をせず、意見を求める
顔をつぶさない、顔を立てる
わずかなことでも、心からほめる
期待をかける
激励する
喜んで協力させる
つまり人の才能をうまく引き出すことも重要で、教育者としての側面もリーダーの資質として持ち合わせている必要がある。
さらに、リーダーは大局に焦点を合わせられることも重要で、未来のあらゆる可能性を見出せる人であるべきである。将来のあるべき姿を強く思い描くことができる、そのビジョンの達成のために自ら行動し、ヒトをエンパワーし、ひっぱっていける人材こそ、21世紀の真のビジネス・リーダーである。現在、日本のほとんどの企業ではマネージャーが多すぎて、リーダーが不足している状況になっている。日本企業のグローバル化における課題としてあるのは、グローバルビジネスリーダーの育成が欠けていることである。21世紀に成功するビジネス・リーダーの条件とは、アントレプレナーシップに富み、リスクを恐れず、前例のないことに進んで挑戦すると同時に、他人にも同じように鼓舞することができることであり、マネージャーではなく、リーダーとしての資質を身に着けていく必要がある。
アメリカの経営学者であるバーナードよると、リーダーシップには技術的側面と道徳的側面があるとしている。技術的側面とは、体力・スキル・知識などで、教育などによって育てることが可能な側面であり、一方、道徳的側面とは、決断力・忍耐力・勇気など、個人が生まれながらにもっている資質であって、教育によって育てることがほとんど困難な側面である。PMには、技術的側面よりも道徳的側面のリーダーシップが重要であると考える。
また、今後、ゼネラル・エレクトリック社のCEOであったジャック・ウェルチは「4つのE」を提唱している。
Energy:自らが活力に満ちあふれていること
Energize:目標に向かう周りの人々を元気づけること
Edge:タフな問題に対しても決断できること
Execute:言ったことをとことんまで実行していくこと
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