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イノベーションとMOT

本稿では、イノベーション・マネジメントとテクノロジー・マネジメント(MOT、Management of Technology)の違いについて考えよう。

日本において、イノベーションは技術革新と訳さることが多いため、イノベーション・マネジメントとテクノロジー・マネジメントは同じものであると考えている人も多いのではないだろうか。

ドラッカーが「イノベーションをイノベーションたらしめるものは、科学や技術そのものではない。」と言っているように、イノベーション・マネジメントとテクノロジー・マネジメントは同一ではない。イノベーションは、製品だけでなくサービスなどを含めた革新的なモノやコト、さらには組織・プロセス・販路などの革新までふくむからである。今や、イノベーションは製造企業によって創出されているわけではなく、サービス業からも引き起こされている。

一橋大学イノベーション研究センターの「イノベーション・マネジメント入門(第2版)」によると、

「イノベーション・マネジメント」とは「イノベーションの実現に向けて、効果的かつ効率的に、資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を動員、駆動、結合する主体的な工夫」のことを指している。それは、企業に限らず、個人、産業、国家などあらゆるレベルで行われる取り組みである。

一橋大学イノベーション研究センター「イノベーション・マネジメント入門(第2版)」 (日本経済新聞出版)

とされている。テクノロジー・マネジメントは、企業の資源のうちのテクノロジー(技術)に特化したイノベーション・マネジメントであるということができるだろう。ただし、これも狭義の捉え方かもしれない。大阪大学の延岡健太郎教授によると、

製造企業において、技術や商品に関する戦略的・組織的なマネジメントにより、「製造企業の不可価値創造をサイダイ化すること」にある。起業経営の最大の目的が、使った経営資源に対してより多くの価値を創造することであるという点に、異存はないであろう。

延岡健太郎
『MOT“技術経営”入門』 (マネジメント・テキスト)
(日本経済新聞出版)

テクノロジー・マネジメントは、製造業におけるイノベーション・マネジメントであるということもできる。

ただし、このMOTは米国では廃れつつある。MOTの発祥はMITとされているが、もともとは日本のモノづくりを研究することが始まっている。ジャパンアズナンバーワンとされた時代に、米国が日本のモノづくりに勝つために、トヨタ生産方式などを徹底的に分析して生まれたのがMOTだ。今では、日本の製造業は見る影もない状況にあり、日本に勝利した米国ではMOTはあまり価値のないものとされている。MOTも、戦略論や組織論といった経営学を基盤にしているものだから、経営学をしっかりと学べば、製造業や技術に特化したMOTは特に必要ないとも言える。

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