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サイゼリヤのワインと料理のペアリング

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はじめに

先日、サイゼリヤのワインの話題になり、どんなワインか気になり始めています。そのワインに合う料理を、メニューの中から選んでペアリングしてみたい。ファミリーレストランに行くのはかなり久しぶりでちょっと緊張。

最近このようなツイートをさせていただきました。

以前、ソムリエの協会誌でもサイゼリヤのワインについて紹介されていて、ワインに力を入れていることで有名なサイゼリヤだからこそ、ここでワインと料理を意識的に合わせてみたらおもしろいかもしれないと急に思い立ったのです。

思えばコンビニエンスストアのワインと料理のペアリングシリーズをスタートしたきっかけも、同じように直感的に湧き上がってきたことによるものでした。思い立った以上はもうやるしかない。

サイゼリヤを訪問するのはさかのぼって考えてみると実に23年ぶり。そこでワインを飲むのは今回が初めてです。


サイゼリヤの100円の白ワインと赤ワインのテイスティングコメント

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今回は、サイゼリヤの恵比寿東口店へ。

外観が遠くからでもわかりやすく、イタリアの国旗と同系色のコントラストで統一されています。

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Twitterのフォロワーさんに、「グラスを事前に持ちこんでます!」というコメントをいただいていましたが、確かにプラスチックカップに注がれています。こちらの写真は飲む前の状態。

今回は初のワインオーダーということ、ランチタイムでしかもこの後自分のセミナーがまだ控えているということも含めて、定番の100円のグラスワインの白と赤をオーダー。もちろんこれまでの人生で最安値のグラスワインです。

そしてまずはテイスティング。

白ワイン

ブドウ品種は「トレッビアーノ」。外観はグリーンがかった淡いレモンイエロー。香りはレモンやライムのようなフレッシュな柑橘フルーツ、白い花の香りとセルフィーユのようなグリーンのニュアンスをわずかに感じる。

味わいのアタックは軽快でフレッシュ、ドライで、柑橘フルーツのようなシャープで生き生きとした酸味を感じる。余韻にやや塩味を伴う。終始軽快で爽やか。

赤ワイン

ブドウ品種は「モンテプルチアーノ」。外観はやや明るめのダークチェリーレッド。香りはやや控えめで、ラズベリー、ブルベリーの熟れた香りにゼラニウムのようなフローラルでチャーミングなアロマ。わずかにリコリスやブラックオリーブのニュアンスがある。

味わいのアタックは赤い果実のフレッシュな印象があり軽快、比較的穏やかなタンニン、爽やかな印象の酸味が感じられ、味わいの後半にも酸をしっかりと感じる。全体の印象としては、シンプルでフレッシュ感のあるタイプの赤ワイン。


冷前菜と白ワイン


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ワインは今回この2種類ということで、白、赤それぞれに2皿ずつ合わせることを決断。

そして最初のアミューズ、つまり小前菜として選んだのがこの「バッファローモッツァレラ」。白ワインのキャラクターをイメージしながらメニューを開き、ページをめくっていると即座に「これだ!」と思いました。

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メニューの写真と同じようにオリーブオイルを垂らしながら自ら撮影。モッツアレラチーズのフレッシュかつミルキーな味わいとオリーブオイルの独特の植物的な要素とオイリーなテクスチャー。そこにワインの柑橘やハーブのフレーヴァー、フレッシュな酸味と塩味が重なり、風味を広げてくれます。


温前菜と白ワイン

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時間が経過していく中で、やや温度が上昇してきた白ワインに合わせる2品目のお料理は「柔らか青豆の温サラダ」。この料理はフランス料理で言うと「ティエド」、つまりほんのりと温かい状態。

イタリアでもよく食べられている青豆の甘味を伴うグリーンな要素、ベーコンにはこの白ワインのしっかりとした酸味が、リースリングとベーコンやソーセージのマリアージュと同様に、肉の脂質と調和しながら、旨味を引き出してくれます。全体の味わいを卵がまろやかに包み、余韻にかけてさまざまな味わいが心地よく続く。


温前菜 Part 2 と赤ワイン

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次は赤ワインへ。こちらにも2品をペアリング。

パスタを合わせるか、ミラノ風ドリアをここで登場させるのか、迷いながらメニューを何度かめくっていく。

メインディッシュを意識しながら、2品の流れを考えつつ、メインに豪快な一皿をもっていくために、ここは赤に合わせた温前菜的な料理をチョイス。しかもまだ聞いたことのない料理にチャレンジすることも考えたうえで、この「煉獄のたまご」に決定。

赤い果実の要素と穏やかできめ細かいタンニン、しっかりとした酸味を持つ、この赤ワインのキャラクターから、フランスのブルゴーニュ地方の「ウフ・アン・ムーレット」(卵の赤ワイン煮)と軽快なピノ・ノワールとのマリアージュを連想し、イタリア版で再現したいと考えたのです。トマトの味わいにもこのワインがとてもよく合います。


メインディッシュと赤ワイン

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いよいよメインディッシュが登場。私が選んだのは「柔らかチキンのチーズ焼き」

メインということで、肉料理を合わせることは最初から決めていました。その中でも、牛肉に対してはややワインの重さとタンニン、鉄分的な要素が足りない。このワインはむしろ濃いめのロゼにも近い個性を持っていて、赤ワインとしては軽やかで、渋みよりも酸味を中心としている。

チキンの適度な脂質、トマトとチーズが重なった、まさに「チキンピザ」とも言えるこのお料理が、私の中での答えでした。

実際に合わせてみると、こちらも見事なマリアージュ。ランチの最後を素晴らしい形で締めくくることができました。


最後に

サイゼリヤのフラッグシップ的な料理だと認識している「ミラノ風ドリア」。この料理は23年前の神戸在住時代にも食べた記憶があり、今回、定番の赤ワインと合わせてみたいと思っていました。

この2つは必ず相性が良いという確信があったため、あえて他の料理を食べてから、まだお腹に余裕があれば、シメの1品としてオーダーしようという作戦に出たのです。

しかし、メインを食べ終わると、もはやお腹はパンパン(しかも食べきれず残してしまいました。申し訳ありません。)。今回はこれで充分満足することができましたので、このペアリングはまた次回へ持ち越しとなりました。

お会計はこれら全て合わせて、さらには税込で1,500円。驚異的な安さに、しばし呆然と立ち尽くす田邉。

また機会がありましたら、今度は6名くらいで伺い、ボトルワインリストの中からセレクトをして、それぞれのワインに合わせた料理をオーダーしてコース料理仕立てにして楽しむのも良さそうだな、と考えながらお店を後にしました。

今回も最後までご覧いただき誠にありがとうございました。また次回の記事でお会いできるのを楽しみにしています。


ワインディレクター 田邉 公一



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