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健全に疑ってみるダイバーシティ経営。

ダイバーシティは、これからの時代の企業倫理であり、イノベーションのための手段である…そんな言葉が、この言葉を前に人々を思考停止に陥らせます。

倫理であるにせよ、事業戦略であるにせよ、理屈で腹落ちしなければ、実施すべきではないし、したところで効果は上がらない。ビジネスなんだから、そこには明確な理由がなければ。

かくして、全力で疑ってかかったうえで、ダイバーシティというものの値踏みしてみましょう。

その議論のスタートはここから。アカデミアで出ている一つの結論です。皆さんは、まずこれを知らなければならない。―それは、「ダイバーシティは組織の効率性やチームワークに、明確にネガティブな効果がある」ということです。

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同じものをみて、違うように見えるのがダイバーシティです。

だとすれば、何らかの問題が発生した時に、組織が一枚岩になって対応するのは難しくなるし、そこに至るまでの調整を要する。

それゆえに、これまでは「同じものをみて、同じように見える」ように組織内では訓練されてきたし、そういう人を採用してきたし、そうであることが暗黙の前提として共有されてもいたわけです。

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これが、今日の日本の組織を、極端に居づらいものにしています。

少しでも違うと非常に生きにくくなるのが日本の組織です。

たとえばHSP。感覚器官が人より発達していたり、共感能力が人より高いだけです。だから、音が気になったり、他者の感情を自分事として受け取って、強いストレスを感じます。それを個人の忍耐力のなさに帰着させて、皆と同じでないことが非難されてしまう。

たとえばヤングケアラー(家族のケアをする小中学生世代)。本人に何ら非はないのです。ですが、たとえば両親に代わって料理をしていたりすることを「隠さなければ」中学校で上手に生きていけなかったり、それによって勉学や部活ができなくなることに対して、教師やクラスメイトはごくごく無理解である場合が多い。繰り返しますが、本人に何ら非はないし、さらに言えば、ケアを必要としている家族にだって非はないのに、です。

人と見える世界が違っていては、いけないのか。

人口減少社会。それ自体の良否はさておき、そんな中で、現場の働き手が輝いていない社会に、未来があるというのか。わずかに年間80万人の新生児たちが、各年齢200万人いる高齢者世代を支えなければいけない社会です。数少ない貴社に入ってくる若手に、30歳以上も離れた世代の意見に、きちっと合わせないと生存していけないような組織で、未来があると思っているのですか。

この社会の働きにくさ、個の輝きを鈍らせる主原因の一つが「同じように考えなければいけない」ことにあるとするなら、そんな風土は早々に無くさなければいけません。

―最後に。私は序盤でひとつファクトを隠しました。時を変え場所を変えても、ダイバーシティは効果がないと検証されたと言いましたが、ときおり、効果が出る場合があります。そんなレアケースの一つが、私たち30人の経営学者と昨年行った、日本企業の今を知る調査「組織調査2020」です。

経営に最善の一手はない。条件が変われば正解は変わるのです。

そんな中で、過去いくらやってもプラスには出なかったダイバーシティが、いま、コロナ期の日本企業を対象に調査をしたら、明確に業績にプラスに出た、というのは、あまりにも重い事実なのではないかと、思っています。

組織調査2020 結果概要
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=301

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