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どうして志高いビジネスパーソンほど、怪しい扇動者になびいてしまうのか

「怪しい扇動者が跋扈する中で、アカデミアの知の領域を広げることがAPSの使命」という内容に対して、真摯なご質問をいただきました。プライベートなことも含むので詳細は控えますが、以下が概略です。

「私の知り合いの、とても志高く事業に取り組まれていた人も、変な扇動者にはまって、人生の最後がとても悲しい形になった。どうして人は怪しい扇動者にはまってしまうのか」。

こちら、とても重大な問題だと思いました。

弱っているときほど、私たちは救いを求めて、藁にもすがってしまう。

私たちの心理には「threat rigidity」という困った機能があります。平たく言えばそれは「私たちはやっぱり、危機に瀕して藁にすがってしまう」ということ。人間はつらくなるほどに近視眼になり、目の前に転がってきた何かで危機を脱しようとしてしまうのです。

そして、正解のないものごとであるほど、このthreat ridigityが非常によく働く。正解があるものであれば、人々は藁になどすがらない。他に、すがるべきものが見えているからです。がんだとか、深刻で完全な治療法がないような病になるほど、怪しい民間療法にすがるのはこのため。

そして、ビジネスは、「完全な治療法のない病」と同じ特徴を持っています。正解がなく、日々新しい問題が登場し続ける、永遠に解決しない問題だということ。誰かにすがりたくなる性質をそもそも備えているのがビジネスなのです。

病気などで弱っている人がおられたら、その周りには、正しく判断できる人がいること、良き方向に導いてくれる人、あるいはそんな時にもミスが起こらないような周辺環境を整えておくことが、とても大切になります。

ビジネスも同じ。APSは、そんな存在になれたらいいな、と思っています。経営のことに悩んでいるときに、変なのに引っかかる前に。理論とエビデンスに立脚する世界のほうへと、来てもらえるような、社会環境を整えておく。改めて、APSを―経営学を、しっかり社会基盤にしてゆかねばいけないな、とも心を新たにしました。

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