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三方良しというのは別にキレイゴトじゃない。

先日、某所での新規事業育成の支援において、新規事業ほど三方良しを考慮すべきだという話をしてまいりました。

私の講演や講義などを聴いた方なら、ああ中川のいつものやつね、と思われてしまうところではありますが。機能するビジネスモデルの真髄は、やっぱりこれなんですよ。

三方良し。
近江商人の経営哲学のひとつとして知られる。 「商売において、売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる」という考え方。

私はこれをより具体化して、ビジネスに関わるステークホルダーを具体的に描き出したうえで、その全ての人々が積極的に事業を助けようとするかどうかを、事業のフローチャートで分析する手法(CVCA:Customer Value Chain Analysisと呼ばれるものの、中川なりの改良版)を提案しています。

ヴォルヴィックの事業チャート

画像はヴォルヴィックの事業のチャートです。そこに関わる全ての人に幸せが届く形になっている、実に理想的な事業のかたち。
売り手にとって良い:ヴォルヴィックが掲げる理念は「全ての人に健康な水を届けること。」この理念のもとに顧客への水販売も、ユニセフ経由でのアフリカへの井戸提供も包摂され、全ての従業員に積極的な仕事の意味が与えられる。
買い手にとって良い:買い手は、自分がヴォルヴィックの水を手にすることで、アフリカの人々を救えることを知っている。ただの水を買うよりも、前向きな感情で、ヴォルヴィックを手にすることができる。 
ユニセフにとっても、ヴォルヴィックの存在はとても有難い。
アフリカの人々にとっても、ヴォルヴィックの活動は有難い。
広告代理店にとっても、ヴォルヴィックの活動を広報することは社会にとって良いことと、信じて広告活動ができる。

そら成功するよね、と納得できると覆います。誰もが、この会社のことを助けたい、と願えるかたちになっている。関わり合う全ての人が助けてくれようとしているのだから、上手くいくはずです。

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事業というものは、それによって不利益を被る人、それに反対する人、その中で虐げられたり搾取される人があると、とたんに不安定になります。そこから、活動がほころんできます。

・劣悪な労働という問題を抱えているフードデリバリー。
・長年働いた従業員のプライドを損なうような変革があだとなった大塚家具。
・転売対策などを十分に講じられていないフリマサイト。

問題の所在は、商品力やサービス自体の価値ではなく、事業活動の中で、誰かが苦しみを背負ってしまうことにあります。この点を解決しなければ、事業はずっと、崩壊の危険をはらみ続けることになるのです。

既存の製品・サービスであれば、多くの場合、そうした問題は既に解決済みであったりするおですが、新規事業は、1から事業のかたちをデザインするがゆえに、そうしたステークホルダーの利害の問題が未解決で残りやすいのです。

だから、新規事業こそ、それが人々の支援を得て成長していくように、三方良しでデザインすべきなのです。

三方良しは、決して、事業を行う上での「できたらよいな」というレベルのキレイゴトなどではありません。むしろ、事業を成立させるために、最も大切な要素こそが、三方良しです。

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