眠くて反省した話
Image view: ケベック旧市街の歴史地区_カナダ_ Château Frontenac_ Historic District of Old Québec_ Canada_ 2010年2月カナダ旅日記より。
ドライブは、1000kmが限界だと感じた。
トロントの語学学校で出会った、韓国人の友達3人と日本のレイを車に乗せてトロントからケベックまでの旅に出た。
松田はカナダで車をレンタルするのは初めてだった。つたない英語でドキドキしながら車を借りた。
友達と一緒に長距離ドライブするのは、本当に心からワクワクした。半年くらいトロントに住んで英語での会話にもようやく慣れてきたところだ。トロントでの暮らしがあまり馴染まないレイも楽しそうにしている。
トロントから約800kmドライブするとケベックと言う名前の街がある。
松田はドライブが大好きで、永遠に運転し続けられると思っているタイプだ。電車やツアーではなくレンタカーで行きたかった。
片道約1000kmは余裕だと思った。
カナダのハイウェイは、本当に永遠にまっすぐ伸びていて、真冬だから道路が雪で白くなっている。それが原因というわけでもないと思うが、眠たい眠たい。やばいくらい眠たい。
運転できるのは松田だけ。しかもドライブのスタミナには無駄にプライドがあったから、休憩なんてほとんど摂らない。
なんとか足をつねりながら、旅路を全うすることはできた。いま考えると危ない行為だ。
世界遺産「ケベック旧市街の歴史地区」。
松田は、この世界遺産を本当に訪れてみたいと思っていた。中央にそびえ立つホテル、シャトー・フロンテナック。2008年にこのホテルで世界遺産委員会が開かれたことを覚えていたからだ。
これが本当に美しい建物だった。
これこそ、ザ・世界遺産だぁ。
松田はそう感じて、眠気に耐えて来て良かったと思った。
真冬のケベック。気温はマイナス10度くらいだっただろうか。氷の彫刻がいたるところに飾られていた。
その夜はちょっと高級なホテルで感じのいいディナーで乾杯をした。普段トロントで貧乏生活を余儀なくされていたので、今夜は特に楽しい。
韓国人はとてもお酒が強く、レイも松田も楽しくワインを飲んだ。友達と旅をわするって本当に楽しい。部屋に帰ってまた飲み直す。
普通に楽しかったの旅。で終わるはずだった。
当時、松田は、すっかり世界遺産と言うブランドが付いた場所の景観意外に興味が持てないほどに世界遺産を単独で求めていた。
途中モントリオールという街に立ち寄る。モントリオールもこのあたりでは観光地のひとつとして超有名であり、その美しさはやはり目をみはるものがある。みんなで街を練り歩き教会なんかを見学したり記念写真を撮ったりして遊んだ。
そんな中、松田は
「なんだこんなの普通だね」とか
「やっぱ世界遺産の方がすごいな」
と、自分勝手な発言をしてしまっている。
日本語でぼやいていたので、韓国人の友達には届いていなかったけど、モントリオールも楽しみにしていたレイにチクチク届いていて、怒らせてしまった。
「その場所の良さを見なさい」
レイは言った。
これは松田にとって、ずっと忘れない教訓になった。人に対しても、物事に対しても言えることだ。ブランドで決めてはいけない。もっと「本質的なよさ」を見る方がかっこいい。
世界遺産以外にも胸を打つ美しい景観はたくさんあるのだ。当然ながら。
ケベックの美しさに胸を打たれ、強烈に眠くて、猛烈に反省した冬。