キリマンジャロを描いた話(4)
image view: Kilimanjaro National Park_ Tanzania, United Republic of_ キリマンジャロ国立公園_ タンザニア連合共和国 2013年9月の日記より
●2013年9月10日 ホロンボハット〜キボハット
この日、空は晴れ渡っていた。
キリマンジャロの弟分のような山がある。アストン曰く、MAWENZI という名前だそうで、切り立った崖のような荒々しい形状をした山だ。キリマンジャロよりは標高が低いけど、ロッククライミング的な技術が必要なようで、登るのは非常に困難なのだそう。
今日は朝からキリマンジャロ山頂がよく見える。
「一番キリちゃんがきれいに見えるところってどこなん?」
「もう少しいったところがおれは一番好きさ。」
とアストンは教えてくれた。
その場所には座りやすい大きな岩がごろごろしていて、背の低いかわいらしい感じの植物が並ぶ絶好の見晴らしの場所だった。松田は即座にその場所をスケッチする。
岡本さんはそんな僕たちの様子を映像に記録したり、写真を撮ったりしながら、待ってくれた。でもたまに
「ちょっとじゃまやからそこどいて!」
的なことを言ってスケッチさせてくれないのが岡本さん的ユーモアのようだ。
アストンにただ待っていてもらうのも恐縮なので、
「一緒に描こうやぁ!」
といって誘った。
アストンは最初はとてもいやがっていたのだが、予備のスケッチブックとペンを渡すと、まんざらでもない様子で、一緒に描き始めた。しかしアストンの絵はまず30秒ほどで仕上がった。
山の輪郭をささーっと描いただけだったので、もう少し近景にあるものなども描いてみるようにしてもらった。僕のスケッチの手法はどんな人でもなんか味が出る用に描けるようになっている。近景や手前にいる自分たち人間も描いてもらって、最後に日付、サインをしてもらった。
アストンのスケッチ
松田はこの道の行程の中で、高度の違う2か所のキリマンジャロのスケッチを描いた。岩と砂しかない大地。地球ではない大地に立っているような感覚だった。
本日のランチも中身は同じ。食が進まなくなってきた。高度のせいか、メニューのせいか。この日のランチはチョコレートとパイナップルジュースだけを接種した。ランチの休憩場所で日本人カップルと出会った。二人は名古屋と東京の遠距離恋愛中なのだそう。そんな関係の二人がキリマンジャロに一緒に登っているなんて、なんてロマンチックなんだろう。
岡本さんはアストンに叫んだ。
「恋っていいね!」
最終キャンプ地点のキボハットに到着する頃には、岡本さんも松田もかなり疲れて来ていた。慣れない環境、4,000mを超える高度の中では、知らず知らずのうちに身体に異常が出始めている。松田は高山症状が出やすいため、この時点で少し頭痛の症状が現れたりしていた。朝晩半錠ずつのダイアモックスを服用していたので、それほどでもなかったのかもしれない。
少しよろめきながら、最終宿泊場、キボハットに到着した。
疲れが相まって、夕方にスパゲッティを食べた後、倒れるように眠り込んだ。