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「未来の教室」と「現在の教室」:ICT環境を考える②

前回記事は、こちらから。

前回記事にて、以下の環境が「未来の教室」に必要でしょう!となったわけですが、今回は①デジタルデバイス、②ネット環境について、「現在の教室」を、見ていきたいと思います
① 1人1台程度のインターネットに接続できるデジタル端末
② 映像授業の同時視聴などに耐える高速インターネット環境
③ 個別学習、プログラミング、VR等の学習ソフトウェア
④ (あると好ましい)各ソフトウェアからの「スタディ・ログ」とやらを蓄積できる共通化されたプラットフォーム

日本の学校に、「パソコン」はどれくらいあるか?

今はもちろん、いわゆる「パソコン(キーボード付き端末をいうのでしょうか?定義はさておき)」だけでなく、タブレット端末なども、少しずつ学校現場に普及してきています。私(1986年生まれ)が小学生の頃は、学校でデジタル端末に触れた記憶はなく、中学校の技術の授業で、年に数回パソコン教室を使うくらいでした。今はどうなっているんでしょうか?

文科省「平成28年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」によると、教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は5.9人、普通教室の無線LAN整備率は29.6% となっています。

しかし、これだとちょっとイメージにしにくい。「5.9人に1台」だと「班に1台」くらいありそう。ただ、実際は違います。この「教育用コンピュータ」、パソコン教室の台数も含まれているためです。

ちょっと計算してみる

かなり粗いですが、計算してみましょう。文科省「学校基本調査」によると、小中学校の学校数・児童生徒数は、以下の通り(公立・私立計)。
・小学校:6,448,658人÷20,095校=1校あたり320.9人
・中学校:3,333,334人÷10,325校=1校あたり322.8人
実際には、都市部のマンモス校と地方の小規模校があるので、「1校あたりの児童生徒数平均」の実数とは少し乖離がありそうですが、小中いずれも320人程度の規模になります。

これを先ほどの「5.9人に1台」で割ると、
320÷5.9=54台 になります。1校あたり54台の計算です。

あれ?実際私も計算してみて、思ったより少ないのでちょっとびっくり。パソコン教室では通常パソコン教室を使う授業で「1人1台」環境が作れるよう、その学校の「1学級分+数台」の端末を整備します。公立学校には「学級編成基準」というのがあり、小学校1年では35人、2年以上と中学は40人。これを超えるとクラスを2つに分けるわけです。これは上限なので、実際の「学級当たりの平均児童生徒数」はこれをかなり下回りますが、概ね 「学級人数分のパソコン教室にプラス10台程度」が実態と思っていいのでは、と思います。

これは私が学校に、研修やサポート等でお伺いする時との実感値とも重なります。800人くらいの大規模校に行くこともあれば、全校10人に満たない超小規模校に伺うこともありますが、どこも「学級人数分のパソコン教室にプラス10台程度」です。
小規模校では、1人あたりの台数は多くなりますが、大規模校では少ない。ちょっと進んでいる自治体では、各学校に10台程度パソコン教室に加えて、タブレット端末が配られる。特別支援学級では、1人1台で使える環境が整備されている、といった状況です。

もちろん(何を持って「先進的」かはさておき)先進的な学校や自治体では、1人1台の環境を整備しているところもあります。以下のグラフの通り、自治体によって大きくばらつきが出ていることも課題です。ただ、デジタル端末の台数について、全国的に均してみれば、「2018年、現在の教室、パソコン教室で使ってたよ世代と大きく変わらんやん」と言えると思います。

ネット環境は?

ネット環境についてはどうでしょう?「普通教室の無線LAN整備率は29.6%」と先に書きました。国としては、パソコン教室時代から脱却したいので「普通教室の無線LAN」を目安にしています。「有線で、校内の限られた場所でしか使えない」だと、そりゃ授業での使用頻度は減りますよね。ただでさえ忙しい先生が、わざわざパソコン教室に移動して授業をするのは、大変です。

しかし、これについても数字は3割程度となっており、「校内ならどこでもネットがさくさく使える」状況とは言えません。つながっていても、めちゃくちゃ遅かったり。パソコン教室の端末は、原則すべてインターネットにつながっていますが、ネット環境についても、パソコン教室時代から大きくは変わっていない現状なんです。

今の環境でも、できること

こうした状況だと「なんや。変わってないやん」となりそうですが、学校の環境は変わらずとも、社会は変化します。限られた環境でもできることが増えてきました。

例えば、私たちの開発・運営する学習サイトeboardは、インターネットへの接続環境があれば、場所を問わずに利用できます。放課後のパソコン教室でeboardを使って放課後学習・学習支援に取り組む(eboardがあることで、教科指導ではなく意欲面や学習方法でのサポートができる、先生が少なくても取り組みができる)、数台のタブレットで不登校支援にeboardを活用頂く(学校に来れない日も学習できる)ことも多くなっています。

かつては(学校の外と比べるとどんだけ昔だよ…という話ですが)パソコン教室のパソコンにインストールされたり、学校サーバーで提供されるソフトしか学習に使えませんでしたが、選択の幅は広がりました(パソコン教室へのインストールは、地元ベンダーさんとの交渉が必要だったりで、めちゃ大変。至極大変)。以下のようなサービスは、学校であれば無料で、クラウドベースで使えます。どんどん使おうぜ、と思う。

Microsoft Office 365
Google Classroom
edmodo
まなびポケット

また、学校では利用が難しくても、中高生のスマホ所持率は非常に高いので、家庭での利用やスマホ利用を主として、高校では教育ICT・edtechのサービスが急速に普及しました。Classiスタディサプリなど、義務教育から外れる高校では、家庭での教材費負担が従来から行われているため(高校になると教材費を学校に持って行きましたよね)、民間サービスも入りやすくなります。

そう考えると、全く学校側の環境が社会の変化に追いついていないわけです。それがさらに、授業の中でも有効的に使えれば、、、劇的に学校での学びやそもそものあり方が変わっていくんじゃないか?変えていくべきなんじゃないか?と思ちゃいますよね。

私たちが生きていくより、さらに未来を生きていく子ども達がハッピーでいられるためには、社会の変化に合わせて、大人が変えて・変わっていかなければならない部分もあります。そんな簡単に変わるものではないというのは、日々嫌という程感じるのですが、だからこそ可能性の幅の大きい領域、ICT・edtech(そのものというよりは、それに伴う変化)にチャレンジしようと思う次第です。

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