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【細胞談義042】うつ病を理解する1

こんにちは、ミネソタより、コーイチがお届けします。

今回はご質問をいただきまして、「うつ病」に関して書いていこうと思います。デフォルトモードネットワーク(DMN)という用語についても少しご紹介します。

うつ病とは

うつ病とは何かというと、(説明するまでもないと思いますが)
一過性ではなく一日中気分が落ち込んでしまうとか、何をしても楽しめない、眠れない、食欲がない、疲れやすい、などの身体症状が現れ、日常生活に支障をきたしてしまう気分障害をうつ病と言います。

うつ病は誰もがおちいる可能性のある病気です。ただし一口にうつと言っても、いろいろな種類があります。症状も程度も千差万別、人によって違うのはもちろん、同じ人でも日によって違うもの。

そんなうつ病の具体的な原因とメカニズムは、現代の医学でも正確にはわかっていません。

ただし、感情や気分、心を生み出しているのは脳ですから、全員に共通するメカニズムとして、脳の機能に異常が起きていると考えられますね。
うつ病とはつまり、精神的ストレスや身体的ストレスなどを主な原因として脳がうまく働かなくなった状態ですね。

…と、まぁそりゃそうだろうという話ですが、辛い経験や悲しい体験だけが引き金ではありません。結婚や進学、就職といった人生の中で比較的大きなイベント、嬉しい出来事であっても、その後にうつ症状が出てくることがあります。
嬉しい出来事であっても、体にはストレスになっているわけです。気持ちが落ち込んだり物事を否定的に捉えたり、負の感情に包まれるうつ病ですが、きっかけは負の体験だけではないんですね。

また、体へのストレスとして、手術を受けたとか病気をした、別の病気で治療薬を飲んでいる、ということもうつの原因になることがあります。

普段なら気持ちを切り替えられるような出来事も、うつの状態だとよりひどく辛く感じたり、イライラしたり焦ったりする気持ちが出てきたりします。
また、精神症状のみならず身体症状として、食欲がなくなったり睡眠がうまく取れなくなったり、疲労感、便秘や下痢、吐き気などが現れることもあります。

「いつもと違うかも」というとき、それはうつの兆候かもしれません。

うつの時、できることは何か

そんな時にできることは何か?
それは「しっかりと休養をとる」ということが重要です。
これは単に寝込むという体の休養だけではなくて、学校や職場から離れて環境を変える、友達と雑談するというような、心をリフレッシュさせるような休養が大事です。心身ともに休養が必要なんです。

つまり、体を動かした後にやるような、肉体的な疲労を回復するような方法だけでは、うつからの回復にはちょっと物足りないということになります。

有酸素運動をするといったアクティビティは、うつ症状を軽減することが知られています。「体と心はつながっている」ということがよくわかりますね。

※「原因となるストレスをなくす」というのも当然効果的ではありますが、なかなか簡単にはそれができないですし、問題を解決しても気分が回復しないということも多々あるので、あえてここではそれは横に置いておきましょう。うつの時に問題を解決しようと頑張らなくて大丈夫です。

いずれにしても「うつ病かもしれない」と思ったら早めに専門家に相談してくださいね。

DMNとは?

ところで、うつの原因としてデフォルトモードネットワーク(DMN)が関わっているという説を耳にしますね。DMNってなんでしょう?

安静にしているときは頭を使ってないから、脳を休ませられる、と思う方も多いと思いますが、実は違います。安静にしている時でも、脳は実は物凄くエネルギーを消費して働き続けています。

※睡眠は脳の休息に重要です。適度な睡眠がうつの症状改善や認知症リスクを下げることが知られています。睡眠不足の方へ:そっとこの画面と目を閉じて寝ましょう。笑

脳の神経細胞は互いに接続して神経回路を作って機能しています。目の前のコップを手に取りたいときは、脳の運動を司る領域である運動野が活動して、行動を実行します。これは、脳の活動を観察できるfMRI という装置を使って知ることができます。
では安静にしているときはどうか?
脳は実は相変わらず活動しているのです。運動野が活動するとき、それ以外の部分で普段より活動量が減る部分が出てきます。

例えば何かに集中しているとき、物凄くエネルギーを消費している気がしますが、むしろ活動を収束させているだけなので、消費エネルギー的にはそんなに変わりません。

特定の領域だけ活動させようとすると、それは晴れた日に突然一箇所に雨を降らすようなものです。モヤモヤと全体として雲があり、密度が高くなったところで雨が降る、という方が効率的で発生しやすい現象ですよね。脳でも、弱く全体を活動させておいて、必要な時に必要な箇所に活動を集中させるんです。

つまり、安静にしているときにも活動している脳の領域があるのです。これは脳のアイドリング状態と呼ばれていたりします。デフォルトでは休んでるんじゃなくて働いてるんだ、というのがデフォルトモードネットワークというわけです。

DMNが働いている領域としては前帯状皮質や腹内側前頭前野のような、認知行動や情動などに関わる領域が含まれるんですけど、うつ病ではこの領域の脳血流が変化することなどが知られています。そこから、DMNの働きの変化がうつ病の原因じゃないか、と仮説を立てている研究者もいます。
ただし、そうだとすると、なぜDMNの働きが変化するのか、どうすれば治療できるのか、そういった詳しいことはまだまだ未解明です。

もしDMNが過剰に活動してしまっていて、デフォルト状態でアイドリングどころか過剰にエンジンふかしていたら、そりゃ脳は疲れるでしょうね。
よくマインドフルネスとか瞑想が良いと言われているのは、その考えを絡めていますね。集中して風の音だったり自分の体の感覚に耳を澄ませる時間は、DMNの活動を低下させることにつながり、結果として脳を休められるのでは、という考えです。

これに関して近年論文も出ていて、まさに今世界で研究が進められているところです。確かに、心を落ち着けて瞑想をしてみると、頭がすっきりする気がする…

そもそも軽度-中程度のうつ病ではプラセボ効果も高いことが知られています。自分の気持ちを見つめて、心地が良いと感じる時間を増やしていくことがうつ病からの回復には重要じゃないでしょうか。
原因となるストレスや症状が人それぞれ違うように、解決法も一つではないと思います。


今うつかもしれない、うつで悩んでいる方へ。


誰かに「相談する」ことが治療の第一歩だと思います。一人で抱え込まないようにしてくださいね。これからいいこときっとあります。The best is yet to come!

参考に下記のリンクを添えておきます。

厚生労働省 「こころの病気を知る」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/index.html
こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/
こどもの相談窓口
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm

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