発達障害の子どもに「療育カット」で自信と笑顔を
ども、イシちゃんです。今日は我が家の三男クンが幼稚園で持久走大会があったので、応援に行ってきました。「大会」と言っても、競争ではありません。競争ではないので、順位もつかないのですけど、これもイマドキ幼稚園なんでしょうね。
その三男クンですが、前回の話で取り上げた「療育カット」のキッカケを与えてくれた大切な存在です。正式な名称があるわけではないので、現状としては僕が勝手に使っている造語ですが、細かい表現方法に違いはあれど、児童発達障がいを抱えるご家庭に配慮したヘアカットは、いま、広がっています。
今回はそのことについてお伝えします。記事の最後には、現在療育中の方や施設で働いている方にもお使い頂ける素材のプレゼントをご用意しております。
1. 療育カットとは?
1-1. 療育カットの概要
「療育カット」は、児童発達障がい等を抱えるお子さんがヘアサロンでのヘアカットに困難を抱える中、自宅などへ訪問しカットをしたり、自宅でのカットからお店でカットができるようにトレーニングしたり等社会活動の幅を1つ広げるためのヘアカットです。
先程も述べたように、正式な名称はありません。表現方法は個々の美容室で異なりますが、児童発達障がいを抱えるお子さんへ配慮したこの取り組みは国内で広がっています。
僕は現在療育中のご家庭の方に限らずどんな人にも一目で理解していただきやすい言葉としてこのように呼んでいます。
療育カットを始めたキッカケは我が家の三男クンです。ちょっとワンパクな子だなぁとは思っていましたが、療育保育士の妻が様々な点から気づいたところから始まり、「子供のヘアカットに困るご家庭」はきっと他にもあるだろうとの思いから療育保育士である妻の監修に基づいてメニュー化に至りました。
療育の現場で活用されていることをヘアカットに応用し、保護者が自宅で行うカットから、療育のノウハウを借りてスタイリストによるカットへスムーズに移行することを目的としています。
1-2. 発達障がいを抱えるお子さんの療育における課題
現在の療育の課題として、児童発達障がいのお子さんがヘアサロンでのヘアカットに対して抱える困難が挙げられます。従来のアプローチでは、子どもたちの特性に適した方法での施術が不足しており、それが療育の効果を妨げていました。このため、新しいアプローチの必要性を感じた美容師たちが個々で動き始めています。
2. 療育カットの必要性
2-1. 発達障がいを抱えるお子さんへの個別対応
発達障がいを抱えるお子さんは様々な課題を抱えてます。その中には一般のお店でのヘアカットには対応しきれないものがあります。
例えば、感覚過敏や意思の疎通が困難なことなどが挙げられます。通常のヘアサロンでは、お子さんにとって店内の会話やBGM、ドライヤー等の音が騒音となり刺激が過剰であるため、お子さんが落ち着いてヘアカットを受けることが難しいのです。そのため、個別に対応できる療育カットが必要とされます。
2-2. 療育の効果的な実施方法
療育カットは、児童発達障がいのお子さんの特性や個別のニーズを理解し、それに合わせたアプローチを行います。
まず、最も初歩的なところで言えば、「顔見知り」レベルで仲良くなるということです。療育中のお子さんに限った話ではありませんが、ヘアサロンでのヘアカットをお子さんが嫌がることの多くは、「人見知り」「場所見知り」「切られる感触」であることが多いです。ただ、その度合いが療育中のお子さんの場合大きいため、「人慣れ」「場所慣れ」「道具慣れ」という段階が必要です。
また、療育を応用し視覚的アプローチを取り入れることで、子どもたちの安心感をさらに高めるように心がけます。絵カードやタイマーを使用し、事前にカットプロセスを視覚的に提示することで、不安や恐怖感を軽減させることができます。
加えて、応用行動分析(ABA)を工夫して導入することも大切です。簡単に言うと、良い行動がデキた時は褒めてサポートすることで、子供の自信を促し成長できるようにします。そのようにして、子どもたちが自分のペースで療育に参加できる環境を整えます。
その子の状態にもよりますが、繰り返しの練習を通じて、子どもたちが段階的にヘアサロンでのヘアカットに慣れていくプロセスを重視します。(お子さんの状況によってはヘアサロンに行けなくてもヘアカットに慣れる事を重視するケースもあります。)
このような方法を通じて、お子さんが安心してヘアカットを受けることができ、それが彼らの発達や精神的な健康に良い影響をもたらすことが期待されます。
3. 子育て支援と療育カットの結びつき
3-1. 療育カットがもたらす子育ての効果
療育カットが子育てに与える効果は多岐にわたります。例えば、ヘアカットのストレスが軽減することで、子どもたちに自信が芽生えます。すると、外出やその他のイベントへの参加意欲が高まります。
また、保護者の方がお子さんの髪を切るストレスが減り、保護者の方がお子さんの対応に専念できることでコミュニケーションが深まります。
加えて、ヘアカットが子供たちにとって楽しい時間となれば、子どもたちはお店への抵抗感が減り、新たな社会活動として積極的に受け入れやすくなります。
3-2. 療育カットが親子関係に与える影響
療育カットは親子関係にも変化を与えます。一つの事例として、療育カットを導入した家庭では、保護者の方が子供の気持ちを理解し、それに対応するための工夫が増えました。親が子供に寄り添い、恐怖感を和らげるためのアプローチを共に模索することで、親子の絆が強化されたということです。
また、子供たちが新しい経験に積極的に取り組む姿勢も見られ、その成長に対する親のサポートが一層重要になりました。療育カットを通じて得られる成功体験が、親子関係をより良いものに変えていく過程を示す事例は日本の各地で報告されています。
こうした変化の積み重ねで、子育てのストレスが軽減し、親子共に成長と学びの機会を増やすことが期待できます。このような影響を通じて、療育家庭がより支えられ、健やかな成長を遂げる手助けになると信じています。
4. 実践的な療育カットの方法
4-1. 個別化されたプログラムの構築
療育カットでは個々の特性に合わせて、プログラムを構築します。まず、子どもの感覚過敏や運動機能の制約、会話の困難などに焦点を当て、それに応じたアプローチを考えます。
また、絵カードやビジュアルスケジュールを活用し、子どもたちが施術プロセスを理解しやすくする工夫もします。感覚統合療法や認知行動療法の手法も取り入れ、子どもたちが安心感を得られるような環境を整えます。個々の進捗や課題に合わせて柔軟に調整することで、より効果的な療育カットが実現します。
4-2. 家庭での日常活動を活かしたアプローチ
療育カットは、家庭での日常に取り入れることも効果的です。子どもたちが最も安心できる場所での遊びを通じた練習などです。具体的には、家庭の日常の中で、ヘアカットの要素を盛り込みます。
例えば、おもちゃのカットセットを使用したり、カット中に好きな音楽をかけるなど、子どもたちがリラックスできる環境を整えます。また、療育の一環として、親や兄弟姉妹がお互いに模擬的なカットを行うことで、練習の機会を増やし、慣れていくプロセスをスムーズに進めることができます。家庭内での積極的な取り組みが、外部の環境への適応を促進し、療育の成果をより確実なものにします。
これらの実践的な方法を通じて、子どもたちがヘアカットに対して安心感を抱き、段階を踏んで慣れていくプロセスを促進します。発達障害児それぞれの特性に応じた工夫が、療育カットの成功につながります。
5. 療育児と向き合うために必要なこと
5-1. 誰かと比べない
療育中はついつい他の家庭や兄弟姉妹と比べてしまいがちです。ですが、療育に限らず、どんな子供であっても、異なる特性を持つ子供たちがそれぞれ異なるペースで成長する中で、比較する事は望ましくありませんし、親にとってもストレスの原因となります。
誰かと比較することで得られる情報は参考になりますが、それを基準に自分や子供を評価することは望ましくありません。代わりに、自分の子供の成長や発展を前向きに捉え、他の親たちと共有することが大切です。自分たちのペースで進むことで、子供がより良く適応し、成長できる環境を整えることができます。
ちなみに、僕は子供が5人いるので、いちいち比べていても仕方がない上に、5人も子供がいればそういう特性を持った子がいてもおかしくないと思うので特に悩む事はありませんでした。
…が、子供を育てる上で多くの人が抱く「キー!!!」となる瞬間は多々あります。今は三男クンよりも、末っ子ちゃんの過激な寝相のためにオムツで窒息しそうになることの対策で頭を抱えています。そんな時は最近ではTAKさんのYouTubeチャンネルで育児替え歌を聞いて気持を切り替えています。
5-2. 成功体験の重要性
療育児にとって、成功体験は大変重要です。療育児に限った話ではありませんが、成功体験が積み重なることで、子供たちは自己肯定感を高め、新しい挑戦に対しても前向きな姿勢を持つことができるようになります。療育児にとってはその効果が一際大きいです。成功体験を促すためには、小さな目標を設定し、それを達成できた時には大きな賞賛や褒め言葉を与えることが効果的です。
例えば、ヘアカットのプロセスで「櫛で髪を梳かせ」たなど、見落とすほどささいな1つの工程をクリアすることや、お店でのヘアカットを無事に終えることが成功となります。この成功体験を通じて、子供たちは自分の可能性を信じ、困難に立ち向かう力を身につけることができます。
これらのことを取り入れることで、療育中の保護者の方はよりポジティブな子育て体験を築くことができ、子供たちにとっても成長の機会が広がるのではないかと考えます。
僕も最初の育児からしっかりできたわけではありません。長男の時から褒める時は褒めていたほうでしたが、一方でゲンコツをすることもありました。時を重ねて、経験を重ねていく内に改善すべきは改善し、今では小さなことでもオーバーに褒めたり驚いてみせたりできるようになりました。親にとっても「できなかったことが、できるようになる」チャンスなんだと思います。
6. 我が家の場合・・・
我が家の三男クンは多動で、ジッと座っていられませんでした。そこで、テーブル付きの椅子でカットを行うことにしました。タブレットで動画を見せたり、テーブルに好きなおもちゃを置いて遊ばせてみたり、カットしてテーブルに落ちてくる毛に触れさせて遊ばせてみたりして注意が椅子の外に向かないように行いました。
そうした事を続けた結果、ヘアカットに慣れてきて、ヘアカットの短い時間であれば比較的おとなしく座れるくらいにはなりました。
ただ、誤解して頂きたくないのは、こうした結果に至るまでは決して楽な道のりではないということです。実際に療育している人なら分かりますが、最初から上手くいかないのが当たり前なくらいです。
施術前の顔合わせの段階で慣れてくれるまでに時間がかかる子もいますし、「無理強いしない」が鉄則なので、途中でカットを中断し後日切り直すことだって当然あります。
ですが、大事なのはそうした負担を療育家庭内だけに負わせないことと、子供と共に成功するまでの過程も含めて体験を共有する事だと思います。
7. ご自由にお使いください
僕は中学生の頃から比較的「子供ウケ」が良い方でした。それもあって、近所の小さい子達のお世話が好きで、進路を決める時には保育士も選択肢の1つとしてあったくらいです。そういった人生経験も影響してか、美容師になってからも比較的子供のヘアカットで悩む事は少なかったように思います。
ですが、それでも「カットが大変な子」に出逢った事は数多くあります。美容師としての経験を積み、親になり、療育保育士の妻に出逢い、我が子の中にも発達障がいの子がいたりといった状況の中で、ふと思ったことがあります。
今だからこそ児童発達障がいの認知度は高まりましたが、これまでに出逢った「カットが大変な子」の中にはそうした特性を持つお子さんがいたのかもしれない…とか、あるいは、特性だけの問題じゃないのかもしれないということです。
そうした事に気づいた時に、僕は療育カットもこれからの美容室に必要な事だと考えました。療育カットのスキルは「カットが大変な子」全般に通じるからです。
しかし、その認知度は発達障がいに比べると格段に低い現状があります。そこで、本当にささやかではありますが、これを読まれた方で必要としている人にヘアカットで使えるヴィジュアルカード(絵カード)をご用意しました。
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