知ってる!環境のこと(第60話)

⁂データや内容は、当時のものですのでご理解ください。
 
こんにちは、いかがお過ごしでしょうか?今回のテーマは、「都市鉱山(urban mine)」です。近年、中国を筆頭とする途上国の経済発展により、世界の原料価格が上昇しています。内需を優先させるため、自国の資源に輸出制限をかける国も出始めており、資源確保が緊急の課題となっている中、注目を集めているのが都市鉱山です。
 
都市鉱山とは
都市でゴミとして大量に廃棄される携帯電話や家電製品、コンピューターなどの中には、貴重な金属資源が膨大に含まれていることから、これらの廃棄物を鉱山に見立ててつけられた言葉です。1980年代、東北大学の南條道夫教授らが、工業製品を再生可能な資源と見なし、都市鉱山と呼んだのが最初といわれています。
 
なぜ注目されているのか
含有率の高さ
都市鉱山に含まれる金属は、天然原料に較べて含有率が格段に高くなっています。例えば、金の場合、天然の鉱石1トン中に数十グラムあれば、含有量は多い方だといわれます。一方、携帯電話の場合、1トン中、300グラムの金が含まれているといわれています。これは、天然鉱石の実に10倍近い量であり、実際に高山から採掘して、精製する手間隙を考えれば、都市高山は非常に魅力的なのです。


レアメタルの宝庫!
液晶パネルに使われるイリジウムや携帯電話やパソコンの電池に使用されるコバルト等の金属は、埋蔵量が少なかったり、技術的・経済的に入手するのが困難なことから、希少金属としてレアメタルと呼ばれていますが、都市高山には、このような金属が豊富に含まれています。
 
都市高山の量が自然よりも多い!
都市鉱山は、既に天然資源を上回っているといわれています。日本の例を見てみましょう。
独立行政法人物質・材料研究機構が2008年1月11日に発表した数字によると、日本の都市鉱山に存在する金の総量は6,800トンで、これは全世界の現有埋蔵量の約16%にあたり、なんと世界一の埋蔵量を誇る南アフリカよりも多くなります。銀は60,000トンで、これは世界の埋蔵量の22%にもおよびます。同様にインジウムは世界の61%、錫は11%、タンタルは10%と、日本の都市鉱山には全世界埋蔵量の一割を超える金属が多数存在しています。日本は、都市鉱山という観点から見ると、世界有数の資源大国となっているのです。
 
課題
回収方法
 廃棄物・スクラップの効率的な回収方法が、確立されていないことがあげられます。日本を例に挙げれば、2001年より、エアコンなどの家電4品目は、家電リサイクル法により、回収されているものの、2008年2月に発表された「家電リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書」によると、推計で年間2,287万台が廃棄されるなか、不法投棄が11万5,000台、その内行方が把握できない廃家電が1,000万台程度もあることが報告されています。その多くは、リサイクル業者に横流しされていると言われています。また、家電リサイクル法の対象製品以外は、未だ法整備が進んでいません。
また、携帯電話の廃棄については、電池は法律上回収義務が定められているものの、携帯電話本体や充電器の回収は企業の自主的な取り組みに任せられており、回収台数は2000年度の1361万5千台をピークに減少傾向にあり、2007年度は、800万台を下回っています。
 
リサイクル技術
廃棄物より、各資源を取り出す技術開発が、十分とはいえません。様々な金属が存在する廃棄物の中から、目的の金属を取り出すために、吸着剤が使われますが、現在使用されている多くの吸着剤は、金属を取り出した後、廃水処理が必要であったり、熱処理が必要であり、その後ダイオキシンなど他の廃棄物を生み、更なる環境負荷を掛けるものが一般です。また、複数の金属を同時に吸着し、特定の金属だけを取り出すことが難しいこともあります。現在、果物や古紙の繊維などを利用して、環境負荷を掛けずに吸着力を高める吸着剤の研究が行われていますが、開発段階のものが殆どです。
 
携帯電話1台から、0・03グラムの金が抽出でき、何万台も廃棄されている現状を考えれば、「都市鉱山」は貴重な資源の宝庫であり、今後、有効利用できる技術開発が求められます。ただ、次々と新製品が市場に投入され、まだまだ使えるのに、新しく買い換えなくてはいけないような雰囲気には違和感を覚えます。ものを大事に長く使うことも忘れてはいけないと思うのです。

CHAOちゃ~お ちょっとディープな北タイ情報誌
(毎月2回10・25日発行)2009年7月25日第151号掲載


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