Kohtaro.

2022.9-2024.3 パリへ語学留学 芸術批評は判断を下すのではなく、真実を表…

Kohtaro.

2022.9-2024.3 パリへ語学留学 芸術批評は判断を下すのではなく、真実を表現する視覚芸術の美を言葉で表現するもの。 言葉は真実を語らない。だからこそ言葉で真実を表現したい。 これらをモットーに、徒然なるままに、色々書いております。

最近の記事

帰国に際して4:邦文学だいすき

 帰国してからちょうど1ヶ月が経とうとしているが、この期間、実家に眠っていた既読の和書たちを耽読している。  日本語から離れること一年半、勿論、時折家族や友人との会話で日本語を使用してはいたが、大好きで肝心な文章表現にはなかなか苦心している。これらのブログを書いている時も、頭の中のアイデアはもっと明瞭で洗練されているのに、ありふれた言葉をもって、曖昧で抽象的な表現しか出来ないのは、悔しくて堪らないのだが、文章とはもともとこういうものなので仕方ないのかもしれない。  留学・

    • 帰国に際して3:言語による自己発見の旅

       言語が持つ力は、人が思っているよりも強力であるように思えてならない。  先日NHKBSのワールドニュースを見ている時に、イギリスBBCであっただろうか、中国の工場閉鎖により広がる貧困の問題について取り上げていた。工場で何十年と働いてきた男性が、閉鎖に伴い解雇、政府からの支援金もなく、苦しい生活を強いられている。その彼が短いインタビューに答えているとき、彼は力のない様子で中国語を話しているのだが、BBCにおいては男性アナウンサーが同時音声として通訳をしていた。彼の英語はもち

      • 帰国に際して2:体験と経験

         能面はその表情が、見ている人の解釈、知識、感情、感性によって変化する。その能面から、その人に委ねられるもの、と言う文脈内で最近考えているのは、体験と経験、つまり行為と、そこから得るものについて。  留学から帰ってくると、何かと周りから持て囃され、なんでもすごいねとお褒めの言葉を頂いたり、「フランス語喋ってみて」と意味もなく求められたり、大変有難い限りで、こちらとしても時に天狗になりかける時がある。しかし留学をしたからすごいというのは無論欺瞞を孕んでいて、結局その留学という

        • 帰国に際して1:能楽鑑賞

           弥生も末、幾分霞んだ蒼天の下タクシーに乗り込み、愛するこの巴里の街に一先ずの別れを告げた。  あれから一箇月が経とうとしている。羽撃く時を目の前に、成す術もなき世の儚さ。 日本に帰ってきてまずした事と言えば、能楽鑑賞である。  能、これには長い事興味を持っていて、そのきっかけは白洲正子の著書「ほんもの」の中にある、ビートたけしが能について話していることに対して筆を取っている一遍、  このたけしの新鮮な目は意外なことにも、小さい頃から能に励んでいた白洲には好評で、「お能

        帰国に際して4:邦文学だいすき

          「いき」の構造とフレンチタッチ 1

          1  「いき」の構造に就て 最近、九鬼周造さんの「いき」の構造という本を手に取った。これが、たいへんに難しい言葉の回しながら、面白い切り口で日本民族独自の美意識である「いき」を説明していて、なかなか印象的であった。 1930年に京都大学の一教授が「いき」についてこれだけ熱狂的な論文を書いたのは、単純に彼が「いき」という分野を専門に研究していたからというだけではなく、もしかしたら、例えば谷崎潤一郎が同時代に「痴人の愛」の中で描いた、日本人の外国人(特に白人)称賛の傾倒に対す

          「いき」の構造とフレンチタッチ 1

          00 白紙

          フランス語で、Carte blancheという表現がある。 日本語で言うと白紙委任権という意味になるのだが、これがなかなかの代物だ。 現在インターンをしている会社では、ECサイトのデザイン、コンテンツの作成と、毎週ファッションジャーナリズムの記事を書いているのだが、全てにおいて自分がCarte Blancheを握っている。 どんなデザインでもいい、どんなコンテンツでもいい、何を書いてもいい、そう言われて白い画面の、白い紙の前に座り、手はなかなか動かないものなのだ。 そし

          3年ぶりの思い出

          今日は久しぶりに、僕にとっての本当のパリ、Saint-Germain-des-Près界隈を散歩しました。 まず散歩はボンマルシェから。久しく見ていなかったブランドのブティックを長め、新作が出て以来見られていなかったCELINEの香水をお試し。 3年前にパリに初めて来た時、サンジェルマンデプレにある店舗で「Saint-Germain-des-Près」の香水を嗅ぎ、あまり好きではない香りだったものの、僕にとってのパリの香りになっていたことを、久しぶりに思い出しました。

          3年ぶりの思い出

          考えることは、輝くこと

          「我考える、故に我あり。」 考えることは私たち人間の存在意義であり、考えるために私たちは存在する、考えているから私たちは存在する。そのため、僕はマルクス・アウレーリウスのこの言葉を大切にしています。「自分に暇を作って、もっと何か善いことをおぼえ、あれこれととりとめもなくなるのをやめなさい。」 デール・カーネギーは名著「道は開ける」で、悩みに対処する方法として、とにかく働き、悩む暇を作らないことを提案していました。勿論この考えにも賛成です。働いている時には忘れる日々の悩み、

          考えることは、輝くこと

          最近の留学生活

          新学期が始まって2週間、今日から1週間のバカンスに入りました。はい、さすがバカンス王国フランスです。 学校だけでなく、アルバイト先のパティスリーもバカンスなので、文字通り1週間のバカンスなのですが、旅行をするにもあまり気が起きず、そんなお金もなく。運動したり、勉強したり、人生史上最悪の肌を少しでも治したり、ゆっくり過ごしたいと思います。 2ヶ月の冬休みを挟み、秋に3ヶ月間通っていたソルボンヌ付属の語学学校に戻ったのが2週間前。冬休みの間1ヶ月通っていた私立学校の、雑談中心

          最近の留学生活

          冬のパリの、青空の下

          昨日は、サントノレ通りにあるブルネロクチネリのブティックに足を運んでみました。 表参道店のような展示室を見に行きたかったのですが、見当違いでそのお店にはなく。けれども、久しぶりに足を運んだブランドのブティック、久しぶりに触れる素晴らしい自然の恵みのテキスタイル、目に優しい、心に優しいグレーとベージュのカラーリング、それだけで足を運んだ価値がありました。 中国人の店員さんに、思っていた通り英語で Hello sir, how can I help you? と挨拶されたので

          冬のパリの、青空の下

          文化を尊重するとは

          フランスの人は皆口を揃えて、 「私の英語の発音は悪いのよ」「僕の英語は下手だ」 と前置きをしてから、日本人の感覚からしたら素晴らしい英語を話す。 勿論、フランスなまり、アクセントはある。 フランス語ではHは無音なので、hungryはangryに聞こえるし、ほとんど全てのものに性別があり、代名詞もそれに対応して「彼」「彼女」となるので、"The car, it's beautiful" は英語で "The car, she's beautiful" 言うこともある。なかなか

          文化を尊重するとは

          I'impression dans la vie

          Observer, plutôt que juger. C’est bon, c’est pas bon, ça m’est égal. L’important c’est le regarder avec attention, et bien observer. Nous somme tous les mêmes. Nous faisons quelques choses très bonne, et mauvaise aussi. Mais ça c’est la v

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          日々の印象 かけがえのない学び

          (僕が留学で学んでいる一番貴重なこと。 日々忘れないように、大切に胸にしまっていること。) 判断より観察。 良い、悪い、そんなことは自分の範疇ではなくて、物ごとをしっかりと見て、考察することが大切。 誰もが同じ人間で、皆良いことをする時もあれば、良くないことをする時もある。でも、それが人生だから。 最も大切なことは、自分の心の奥底の声を聞くこと。そして、それに正直になって行動すること。 人生は一見とても複雑そうに見えるけれど、実はとても単純明快で、心こそがその答え

          日々の印象 かけがえのない学び

          ローマ一日目の夜

          こんなに興奮する旅はとても久しぶりだった、あっという間に過ぎた半日を、夢見心地で歩き続けて、疲労と興奮で少しおかしくなりそうな一日目の夜を過ごしている。 信じ難いほど偉大な遺産は、こんなちっぽけな自分を寛大に包み込んでくれている気がした。 ジェラートを片手に、トレヴィの泉からパンテオンまでの細い道、固い石畳にローファーの音を鳴らしながら、心を空にして歩いた夕方。 ローマのテーラーの香水が手首から香り、感じたことの無い幸福感に満たされていた。 以前まで、癖の強い発音が耳

          ローマ一日目の夜

          1ヶ月の語学学校の思い出

          2ヶ月という長すぎる冬休みを利用して、この4週間のみ、私立の語学学校に通っていました。 9時にようやくお日様が目覚める冬のパリで、授業は8時30分開始。毎朝早起きが大変でしたが、それも乗り越えられるほど楽しい学校生活を送ることができました。 クラスは8-10人の少人数で、コの字に座り、座学よりも会話が重視された教育システムは、ソルボンヌでの先生と黒板と教科書に向き合うシステムと全く異なり、勉強ばかりしてきたために、実用力に欠けていた僕にとって、この上ない絶好の機会となりま

          1ヶ月の語学学校の思い出

          ドラクロアと静寂

          今日はドラクロア美術館に来ました。 サンジェルマンデプレから、セーヌ川に向かって入り組んだ道を進み、お昼時、パリジャンで溢れる活気のある界隈に、再びパリを感じながら、とても静かな道に、ドラクロア美術館の入口はありました。 道に面した表玄関から入ると、小さな中庭を通り、漸く美術館の建物に着きます。どうやらここは、ドラクロアが住んでいた家だそうで。美術館にしてはとても小さいなという印象を抱きましたが、その印象はすぐに拭われるのでした。 小さな受付を通り、階段を上ると、廊下が

          ドラクロアと静寂