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【詩】わたしの生命(作:小林亀朗)

鎌倉に住みたい
北も西も愛しているはずなのに
今どうしようもなく鎌倉に住みたい
鎌倉に住んで
好きな人と一緒に小さな店をやりたい
レコードをかけたい
安いやつがいい
街角の寂れたレコード屋で叩き売りされていて、針を置くとぷつぷつノイズの入るようなのがいい
プレイヤーはT君の持っているやつがいい
他のではだめだ
あの音が籠りやすくてたまに針が飛ぶやつがいい
静かな曲がいい「旅立つ秋」なんかいい長谷川きよしが歌ってるのがいい
店は駅から少し離れたところで、入り組んだ路地の中にあって、裏手に小高い山がある
その山を背中に感じて
鎌倉で生きたい
店には本を置きたい。たくさんの本を。わたしがいままで集めてきたのを
みんなあげるよ。見知った人にも、もう会うことのない人にも
コーヒーと小さなケーキがあるといい
好きな人と一緒に作るのがいい
結局うまく手伝えなくて洗い物だけするのもいい
お客さんとはちょっぴりお話したい。色々なお話を聞きたい。
詩とか短歌とか小説を、ただ自分のために書きたい。別の世界のことをまっすぐな言葉で書きたい。
たまには北へ行きたい。たまには西へ行きたい。
わたしに許された一筋の生命をわたしのために探りたい

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