第3回 誰もが、静かに泣いていた
『南の島に雪が降る』——タイトルに惹かれて、小学校2年生の時に映画を観ました。どんな話だったのか、すっかり中身は忘れましたが、主演俳優が「原作を書いた人だ」と教えられ、以来、加東大介という名前と顔はしっかり記憶に刻みました。
その、半世紀以上も前に書かれた本を、いま初めて読んで驚嘆しています。少しも古びていないばかりか、文章はみずみずしく、切々と物語が胸に響きます。太平洋戦争の実体験を描いた作品は、ジャンルを問わず、かなり目を通してきたつもりですが、この本はいま改めて読