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発達障害者が世界と和解するために払う努力のこと

今日は、発達特性を持つ人が世渡りをしていくためにできる工夫について考えてみようと思います。

発達障害と診断されたら。
あるいはそのグレーゾーンと言われたら。

どんな気持ちになるでしょうか。
絶望? 納得? 安堵?

別に気にしないという方は、この時点では少ないかもしれません。
日常生活で困っているからこそ、受診したのでしょうから。

そしてこう思うでしょうか。
「さて、どうしたらいいんだ?」

「じゃあどうやって生きていこうか」という内容まで踏み込んで教えてくれる情報は、実はなかなかありません。
ボランティアをしているJPTアンバサダーの一人に教えてもらった本にはそのヒントがありましたので、ご紹介します。

『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』

その本の題名は『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』。

著者「借金玉」さんはADHDの診断を受け、投薬治療や入院経験もある方です。
さらっと読める内容です。

この本には、彼が人生でことごとく失敗した経験から導き出した処世術が詰まっています。

たとえば。
書類を忘れないようにすべての書類をかばんに入れて持ち運ぶ。
忘れっぽいなら、忘れない努力をするのではなく、忘れようがない仕組みにする。

たとえば。
人間関係における謎の暗黙ルールがあっても、正面からぶつかるのではなくゲームでも攻略するかのようにこなしていく。

彼は諦めることなく、努力したわけです。
この世界でなんとかやっていくために。

そして本の終わりに、こんなふうに書いています。

僕はずっと、歳をとるのはネガティブなことだと思っていました。
(中略)
でも、30歳を超えて思ったことは、「発達障害に由来する辛さはどんどん楽になっているな」ということです。昔ほどに人間関係で転ぶことも、日常生活で転ぶこともなくなりました。もちろん、それは積み上げてきた方法論の成果というところもあるのですが、何より「少しずつだけど発達しているのかな?」と思います。P258

発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術

年齢を重ねることで楽になったという感覚に、覚えがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その理由のひとつは、こういうことだったのかもしれません。

生き抜くスキルを後天的に身につける

発達障害者が世界と和解するためには、ものすごい努力が必要です。
周りの人間がナチュラルにこなすことを、ひとつひとつよく観察して攻略していかねばなりません。

個人的な話になりますが、私もオフィスワークをしていた時代の失敗談があります。
ある日部長に「急がないから」と名刺印刷を頼まれたんですが、翌日先輩を通して「急がないと言われようと、部長の頼みは最優先である」ことが判明したのです。

結局その仕事は辞めましたが、このような経験を繰り返すうちに「社会人の傾向と対策」とでも言うべき様々のスキルを獲得しました。

心のなかでは「アホらし」と思っていても良いんです。
苦手なことは相変わらず苦手なままでもいい。
自分は発達障害だからと思考停止してしまって、世界に対して高い壁を築いてしまうよりは、気楽な人生になるかもしれません。

私は発達障害の診断を受けてはいませんが、
彼の本を読んで、自分よりももっと大きな努力を払って世界に歩み寄った姿勢に、素直に尊敬の念が湧きました。

発達障害は一人ひとり違うので「そのまま使える」スキルにはならないかもしれないけれど、変わろうとする姿勢や工夫はとても参考になると思います。

最後に、本書の最後にあった精神科医の解説から大切なことをひとつ。

おそらく借金玉さんは、発達障害全体の中では重症度は高くないほうだと思われます。
(中略)
この本に書かれたアイデアの中には、発達障害の程度によっては実践困難なものや、トライする際の負担が大きすぎるものもあると見るべきでしょう。私は、重い発達障害の人にこの本を手渡して、「あなたもこれで社会適応できるはずです、やるべきです」と強制することがあってはならないと思います。P268

無理をしないでください。
発達障害の程度によっては、この世に生きているだけで大変な消耗でしょう。

けれど同時に、発達障害の特性と呼ばれるものは、実は私たち全員が多かれ少なかれ持っているものでもあります。「日常生活に支障があるかどうか」の差があるだけで。

まず自分を労る。毎日お疲れさま。
その上で、工夫や考え方次第で楽になることがあればどんどん採り入れていきましょう。

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