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京都タワー

京都タワーに登った。
大阪から来た知人が登ってみたいと言うので、たしかしょぼかった気がするから下から見るだけでいいと思うけど、と言いながら渋々着いて行った。
寺社仏閣みたいな歴史を感じられる趣のある古さじゃなくて、作られてから時間が経った観光名所、という中途半端な古さを纏っているのが京都タワーだと思っている。良く言うとレトロ。

京都タワーは、ホテルとかお土産やさんとかが入ったビルの上に乗っかっている。ちょっとズルをしているといつも思う。
よく蝋燭と間違えられるけど、海のない京都を照らす灯台がイメージされたものだ。
一緒に行く人には毎回この豆知識を披露してしまう。
あと、ちょっと前まで地下に銭湯があったんだよ、私は行ったことないけど、までがセットだ。

ビルの11階までは普通のエレベーターで上がり、謎の舞妓さん像に出迎えられながら展望室まで登るエレベーターに乗り換える。エレベーターの中ではんなりしたアナウンスが流れるようになっていた。壁もなんだかきれいになっているような気がする。

展望室からは京都の街全体が見渡せる。
置いてある双眼鏡はなんと無料で使える。めちゃめちゃ年季が入っているけど、意外とちゃんと見える。

上から見下ろすたび、京都の道って本当に真っ直ぐなんだなと思う。道が碁盤の目みたいに縦横がきっちり90度に交わっている。
縦横の通りにはそれぞれ名前がついていて、交差点は交わる通りの名前をつなげて呼ばれる。「四条通り」と「烏丸通り」の交差点は「四条烏丸」というように。
京都の子供は、通りの名前を歌で覚える。『名探偵コナン 迷宮の十字路』で和葉ちゃんが歌っているあれだ。
この歌さえ覚えておけば迷子にならない。
方向音痴に優しい街。

京都の街の建物は低い。だから上から見下ろすと、建物が並んでいるというよりは、街が広がっている、と思う。
あちこちに神社や寺の屋根や塔が見える。緑がもこもこと広がっているところは京都御所だ。幼い頃はよく家族でピクニックに行っていたから、ずっと大きな公園だと思っていた。やんごとない場所が生活のすぐ隣にあるのが京都という街だ。
京都にいると、過去と今が繋がっているのだとふとしたタイミングで実感する。
私が今見ている壁に、何百年も前にいた誰かが触れていたのかもしれないと思うたび、なんだか不思議な気持ちになる。

京都出身だと言うと、だいたいの人がいいねえ、と言ってくれる。その度に私は、人が多くて大変やで、とか、暑いから帰りたくない、と言ってしまって、ああ私も京都の人だな、と思う。
京都で生まれ育ったことを誇りに思っているからこそ、あなたより京都のことをよく知っているのだという意味をこめたネガキャンになってしまうのだと思う。
腹黒というよりはツンデレが近いような気がする。

たぶんこれからも、どこに行っても文句を言いつつ度々帰ってきて、なんでこんな暑い中来はるんやろ、という顔をして歩き回っては、京都が地元であるということを確認して、安心するのだろう。

祇園祭にやってきた人を横目に帰省から戻ってきて、三連休を終える。

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