マガジンのカバー画像

『演技と身体』

57
東西の哲学、解剖学、脳神経学、古典芸能(能)の身体技法や芸論を参照しながら独自の演技論を展開しています。実践の場としてのワークショップも並行して実施していきますので、そちらも是非… もっと読む
運営しているクリエイター

2022年9月の記事一覧

『演技と身体』Vol.39 無意識の話⑦ 「私ではなく、私でなくもない」

『演技と身体』Vol.39 無意識の話⑦ 「私ではなく、私でなくもない」

無意識の話⑦ 「私ではなく、私でなくもない」前回までは言語の仕組みを手がかりにして無意識の働きについて考察したが、今回は、そもそも言語構造外について考えることができるのかということをテーマにしてみたい。

自他の区別のない世界

簡単におさらいしておくと、無意識は個人的無意識と集合的無意識の二層構造になっているのであった。Vol.35無意識の話③で説明した通り、個人的無意識というのは個人の脳の働き

もっとみる
『演技と身体』Vol.38 無意識の話⑥ 言語的無意識〜イメージを重ねる〜

『演技と身体』Vol.38 無意識の話⑥ 言語的無意識〜イメージを重ねる〜

無意識の話⑥ 言語的無意識〜イメージを重ねる〜前回は、言語の構造を意識と結びつきの深い〈統語法〉的な働き(文法)と、無意識的な機能である〈喩〉的な働き(比喩)の二つに分けて考え、無意識の働きを引き出すためには〈統語法〉的な機能を低下させるということと、〈喩〉的な機能を強調することの両方向からのアプローチが必要だということを述べて終わった。
今回は、その具体的な方法を検討する。

言葉を無意味化する

もっとみる
『演技と身体』Vol.37 無意識の話⑤ 言語構造と無意識

『演技と身体』Vol.37 無意識の話⑤ 言語構造と無意識

無意識の話⑤ 言語構造と無意識言語は意識と無意識の混合体

前回は、個人的無意識状態である「忘我」と集合的無意識状態である「恍惚」について説明したが、これらの状態に技術的に接近するためには、言語構造と無意識の関係について考えることが有効だ。
というのも言語の構造はまさに意識と無意識の混合によるものだからである。つまり、その混合の中から無意識的な働きにフォーカスすることができれば、無意識に接近する方

もっとみる
『演技と身体』Vol.36 無意識の話④ 「忘我」と「恍惚」

『演技と身体』Vol.36 無意識の話④ 「忘我」と「恍惚」

無意識の話④ 「忘我」と「恍惚」前回は無意識に、個人的無意識と集合的無意識の二種類があることを説明し、演技における「忘我」、「恍惚」の状態がそれらに対応するものであることをほのめかして終わった。今回はその続きである。

個人的無意識と超個人的無意識

「忘我」・「恍惚」とは、演技において無意識が表面化した状態を二種類に分けて僕が名付けた呼び方であり、無意識の二つの状態に対応する。
無意識の二つの状

もっとみる