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『演技と身体』

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東西の哲学、解剖学、脳神経学、古典芸能(能)の身体技法や芸論を参照しながら独自の演技論を展開しています。実践の場としてのワークショップも並行して実施していきますので、そちらも是非… もっと読む
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2022年8月の記事一覧

『演技と身体』Vol.35 無意識の話③ 心と無意識

『演技と身体』Vol.35 無意識の話③ 心と無意識

無意識の話③ 心と無意識前回までは、無意識を動作との関連の中で考えたが今回からは、心の働きにおける無意識について考えていきたい。
(なお、今回の記事を書くにあたって主に参照しているのは中沢新一『レンマ学』である。)

なぜ無意識なのか

まず、役者として無意識の問題と向き合うべき理由について述べておこう。
一つには、無意識は心の働きの大部分を占めるものであり、感情を表現するに当たって決して無視でき

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『演技と身体』Vol.34 無意識の話② 無意識を意識化する

『演技と身体』Vol.34 無意識の話② 無意識を意識化する

無意識の話② 無意識を意識化する前回は、意識的だったものを無意識化することについて述べてきたが、今回はその反対についても考えてみたい。

無意識はエラーによって意識化される

歩く行為が無意識の動作の総合であることは前回述べた通りだ。では逆に歩くという行為における一つひとつの無意識の動作が意識されるのはどのような時だろう。それは歩くことに困難が生じた時だ。たとえば足を骨折した時、松葉杖という新たな

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『演技と身体』Vol.33 無意識の話① 台詞や動作を無意識化する

『演技と身体』Vol.33 無意識の話① 台詞や動作を無意識化する

無意識の話① 台詞や動作を無意識化する無意識について語るのは非常に難しい。
無意識と一口に言っても、日常の習慣的動作から深層心理まで使われ方は様々だし、また科学的にも学問的にも十分解明されたとは言い難い、未開拓地なのである。にもかかわらず、それが人の行動や感情に大きな影響を与えていることだけは、多くの人が一致した見解を持っているのだから、無意識について考えないわけにもいかない。
演技者にとっても無

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『演技と身体』Vol.32 間と呼吸

『演技と身体』Vol.32 間と呼吸

間と呼吸ま。

こうしてひらがなで書いたのを見つめているとすぐにゲシュタルト崩壊しそうだ。
間。
間はとにかく捉えどころがなく、よって正解もない。
正解がないのに、面白い間と退屈な間があるのは確かである。
それはその場その時によって適切な間が変化するからだろう。間には決まり切った正解がないが、その時々で適切な間がある。

呼吸。

書店に赴けば呼吸についての本が何冊も売られている。いろんな人がいろ

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